R6年 大気有害物質特論 問9 問題と解説

 問 題     

JISのイオンクロマトグラフ法による排ガス中の塩化水素の分析においては、次式を用いて試料ガス中の塩化水素濃度CV(vol ppm)を計算する。

式中の記号とその説明の組合せとして、誤っているものはどれか。

  • (記号)     (説明)
  1.  a   検量線から求めた塩化物イオンの濃度(mg/mL)
  2.  b   空試験で求めた塩化物イオンの濃度(mg/mL)
  3.  c   イオンクロマトグラフへの試料導入量(mL)
  4.  k   塩化物イオン1mgに相当する塩化水素の体積(mL、標準状態)
  5.  VS   標準状態の試料ガス採取量(L)

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

イオンクロマトグラフ法による排ガス中の塩化水素の分析は頻出テーマですが、本問のように濃度の計算式が主題になるのは珍しいです。この式を知識として押さえている受験者の方は少ないかもしれませんが、知識がなくても各選択肢の妥当性を考えていけば正解することができます。

イオンクロマトグラフ法では、試料ガス中の塩化水素を水に吸収させ、その吸収液をイオンクロマトグラフに注入して濃度を算出します。

ここで問題に示されている式を見ると、「k」はClの質量とHClの体積の比で表される比例定数の役割を果たしていると考えられます。また、「a-b」は試料の測定結果からブランクを差し引いた実質的な濃度を表しているといえます。

そして、残る「c/VS」は試料溶液(吸収液)と試料ガスの比を表していると思われますが、「VS」が採取した試料ガスの全量を指しているのに対して、「c」は吸収液のうちイオンクロマトグラフへ導入する分だけを指しているので、バランスが取れていません。

正しい比を求めたいのであれば、吸収液に通したガス全量と吸収液全量の比とするか、イオンクロマトグラフに導入した試料溶液の量とそれに対応するガス量の比としなければなりません。

とはいえ、導入した試料に対応するガス量はパッとわかるものではないため、「c/VS」は、吸収液に通したガス全量と吸収液全量の比であると考えるほうが妥当です。

つまり、(3)の「c」は「イオンクロマトグラフへの試料導入量(mL)」ではなく「分析用試料溶液の全量(mL)」となります。

よって、正解は(3)です。

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