問 題
塩素を用いる有機塩素化合物の一般的な製造方法として、塩化水素を副生しない反応物と生成物の組合せはどれか。
- (反応物) (生成物)
- メタン 塩化メチル
- エタン 塩化エチル
- エタン テトラクロロエチレン
- エチレン 1,2-ジクロロエタン
- 1,2-ジクロロエタン トリクロロエチレン
解 説
この設問のアプローチとして、各選択肢の化学反応式をしっかり考えていっても構いませんが、答えを出すだけならそこまでする必要はありません。
というのも、(4)以外の選択肢の反応物はいずれも飽和化合物である一方、(4)だけは二重結合を持つ不飽和炭化水素となっています。
ここで、二重結合を有する(4)のエチレンは、塩素との反応によって二重結合が切れて塩素が付加することで、1,2-ジクロロエタンが生成します。
(4)以外の飽和化合物はいずれも、付加反応できる余地がないため、置換反応が起こり、反応物のH(水素原子)がCl(塩素原子)に置き換わるとともに、HCl(塩化水素)が生成します。
よって、塩化水素を副生しないのは(4)のみなので、正解は(4)となります。
以上のように考えて正解を選べれば十分だと思いますが、念のため、以下ではほかの選択肢についてももう少し解説を加えます。
(1)はメタンの塩素化反応で、塩化メチルと塩化水素が生成します。
(2)と(3)はエタンの塩素化反応で、まず塩素が1分子反応すると、塩化エチルと塩化水素が生成します。その後、脱塩化水素反応やさらに塩素化を繰り返すことで、トリクロロエタンやテトラクロロエタン、塩化エチレンやテトラクロロエチレンなど、様々な化合物が生成します。
(4)は上記の通り、エチレンに対して塩素が付加する付加反応であり、1,2-ジクロロエタンが生成します。
(5)は(3)と同じパターンです。1,2-ジクロロエタンを塩素化するとまずはトリクロロエタンと塩化水素が生じます。ここで脱塩化水素反応を行うと、トリクロロエタンからH(水素原子)とCl(塩素原子)が脱離して二重結合を形成するので、トリクロロエチレンとなります。
以上から、正解は(4)です。
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