問 題
組成(質量%)が炭素79.5%、水素5.2%、酸素6.3%、硫黄0.5%、灰分8.5%の石炭を空気比1.2の条件で完全燃焼させている流動層燃焼装置がある。炉内脱硫のため十分な量の石灰石(CaCO3)を石炭と共に供給している。
乾き燃焼排ガス中のSO2濃度が58ppmのとき、炉内脱硫率(燃焼で発生したSO2のうち、石灰石と反応して固定されたものの割合、%)はおよそいくらか。
ただし、供給した石灰石の熱分解に伴い発生するCO2と脱硫反応により生じる乾き燃焼排ガス量の微小な変化は無視してよい。
- 80
- 84
- 88
- 92
- 96
解 説
石炭の成分がたくさん書かれていますが、このうち灰分は気にしなくて大丈夫です。というのも、灰分は燃やしてもガス化しない(=燃えない)ので、燃焼前後のガス成分に影響しません。そのため、残る炭素、水素、酸素、硫黄の燃焼について考えることになります。
以下では仮に石炭が1[kg]あるものとして話を進めますが、この値は適当に決めたものなので、別の数値に置き換えても構いません。結局は比の計算になるので、どのように設定しても同じ答えが得られます。
石炭を1[kg]としたとき、炭素(C)は795[g]、水素(H)は52[g]、酸素(O)は63[g]、硫黄(S)は5[g]であり、各成分は完全燃焼によって以下のようになります。
- C:燃焼によってCO2が生成する
- H:燃焼によってH2Oが生成する(乾き燃焼ガスとしてはノーカウント)
- O:燃焼によってCO2やH2O、SO2の構成成分となる(足りない分は空気中の酸素を消費)
- S:燃焼によってSO2が生成する
以上から、完全燃焼の化学反応式は次のように書くことができます。なお、それぞれの原子量はC:12、H:1、O:16、S:32です。
上図から、完全燃焼によって発生したガスはCO2、H2O、SO2がありますが乾き燃焼排ガス中に含まれるものはほぼCO2だけであると考えて問題ありません。
というのも、乾き燃焼ガスの話なのでH2Oはカウントせず、また、SO2は炉内脱硫によってわずか58ppmまで低減しているため、無視できるほど小さい値となっているためです。
よって、完全燃焼によって発生したガス(CO2)は次のようになります。
一方、消費した酸素(O2)は以下のように計算することができます。
(2)式の消費O2のうち、63[g]分は石炭由来の酸素が使われます。よって、消費O2のうち空気由来のO2は次のように表されます。
ここで、完全燃焼後の乾き燃焼ガス中のSO2濃度が58ppmとのことですが、完全燃焼後の乾きガス成分は次のようなものがあります。
- 完全燃焼で生じたガス
- 使わなかった(余った)分の酸素
- 酸素以外の空気成分(窒素)
1.に関しては(1)式の通りで、66.41[mol]です。
2.に関して、この燃焼反応に使用する空気に含まれるO2は、(3)式と空気比1.2から、次の(4)式のように計算することができます。
よって、使わなかった(余った)分の酸素は次の(5)式で表されます。
3.に関して、この燃焼反応に使用したO2は(4)式より92.93[mol]なので、空気中の酸素濃度は21%、窒素濃度は79%であることから、窒素の量は次の(6)式のように計算できます。
以上の3つの数値((1)式、(5)式、(6)式)の和が乾き燃焼ガスの総量であり、次に示す(7)式で表されます。
そして、問題文よりSO2濃度が58ppmであることから、乾き燃焼ガスに含まれるSO2の量は次のようになります。
一方で、解説の前半で示した硫黄の燃焼の化学反応式より、炉内脱硫がなければSO2は5/32[mol]生じているはずです。よって、理論値が5/32[mol]で、実際には0.02492[mol]となっているので、炉内脱硫率は次のように計算することができます。
以上から、正解は(2)となります。
コメント
問題文にあるただし書きの意味がわかりません。解説をお願いします。