R6年 大気特論 問3 問題と解説

 問 題     

組成(質量%)が炭素87.0%、水素13.0%である重油を専焼している燃焼装置がある。CO2を削減するため、重油にエタンを混焼する方式に切り替える。このとき低発熱量基準で、エタンの燃焼により発生する熱が全発生熱量の18%となる条件とする。

混焼時に低発熱量当たり発生するCO2(m3N/MJ)はおよそいくらか。

ただし、重油とエタンの低発熱量をそれぞれ、42.5MJ/kg、63.8MJ/m3Nとし、両燃料とも完全燃焼を仮定する。

  1. 3.1×10-2
  2. 3.3×10-2
  3. 3.5×10-2
  4. 3.7×10-2
  5. 3.9×10-2

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

この問題は例年の計算問題と比べても難易度の高い問題といえます。計算自体が難しいわけではありませんが、過去に類題が見られないため、解法のような考え方に慣れていないかもしれません。ご自身の学習状況や理解度によっては後回しにしても構わないと思います。

まず、問われているのは「混焼時に低発熱量当たり発生するCO2(m3N/MJ)」なので、以下では全体の発熱量が1[MJ]だった場合について考えていきます。

この1[MJ]のうち、重油からのエネルギーは82%に相当する0.82[MJ]、エタンからのエネルギーは18%に相当する0.18[MJ]となります。

次に、各燃料の消費量について考えると、重油の消費量(質量)とエタンの消費量(体積)は、それぞれ次の(1)式、(2)式のように計算することができます。

続いて、各燃料からのCO2発生量を計算します。

先に重油由来のCO2発生量について考えると、重油中の炭素量は問題文より87%であり、炭素の原子量12とCO2の分子量44から、重油由来で発生するCO2の質量は次の(3)式のように表すことができます。

ここで、最終的に問われているCO2発生量の単位は[m3N/MJ]であるので、次に示す(4)式のように質量から体積へと変換します。

以上で重油由来のCO2発生量[m3N/MJ]がわかったので、今度はエタンについて考えます。

エタンの燃焼反応は、以下の化学反応式で表されます。

上記より、1[mol]のエタンから2[mol]のCO2が発生することがわかります。また、(2)式ですでにエタンの消費量は算出済みであるため、エタン由来のCO2発生量は次の(5)式のようになります。

ここまで、全体の発熱量が1[MJ]だった場合について考えてきたので、(4)式と(5)式の和が求めたい「混焼時に低発熱量当たり発生するCO2[m3N/MJ]」となります。

以上から、正解は(4)です。

コメント

  1. 匿名 より:

    排出係数を考えて、それを発熱割合で加重平均を計算するのは、普通の人には理解しにくいです。なぜ、その計算で解答が求まるのか理解できない人が多いと思います。まずは、正攻法で混焼時にエタンの発熱割合を18%にするためには、重油1kgに対してエタンを何m3N燃やしたらよいかを考えるほうが理解しやすいと思います。

    重油1kgとエタンを x m3Nを燃やしたときの、発熱量Q MJは、重油とエタンの発熱量をHoil MJ/kg, Hgas MJ/m3Nとすると
     Q = Hoil + xHgas
    エタンの発熱割合をyとすると、
     y = xHgas/Q
    = xHgas/(Hoil + xHgas) (1)
    (1)式をxについて解いて、y=0.18を代入すると
     x = 0.18/(1-0.18) x Hoil/Hgas
    = 0.18/0.82 x 42.5/63.8 = 0.146
    重油1kgに対してエタンを0.146 m3Nの割合で燃やせばいいとわかりました。
    このときQは
     Q = 42.5 + 0.146 x 63.8 = 51.81
    CO2発生量 E m3N は(重油とエタンから発生するCO2の量は管理者さんの解説のとおりです)、
     E = 0.87/12 x 22.4 + 2 x 0.146 = 1.916
    以上から、発熱量あたりのCO2発生量 E/Q は
     E/Q = 1.916/51.81 = 0.0370

    ついでになぜ、管理者さんが解説のはじめとした排出係数の発熱割合での加重平均でもいいのかは、次のとおりです。
     E/Q = (0.87/12 x 22.4 + 2x) / (Hoil + xHgas)
    = ((0.87/12 x 22.4)/Hoil) x ( Hoil/(Hoil + xHgas)) + (2/Hgas) x (xHgas/(Hoil + xHgas))

    と変形すれば、
     (0.87/12 x 22.4)/Hoil と 2/Hgas

    は重油とエタンそれぞれの排出係数、
     Hoil/(Hoil + xHgas) と xHgas/(Hoil + xHgas)

    は重油とエタンそれぞれの発熱割合となり、最初に示した正攻法による計算は、重油とエタンの排出係数の発熱割合での加重平均を取っていることに相当することがわかります。むしろ、この考え方がいろいろな燃料を混ぜて使うときに、総合の排出係数はそれぞれの燃料の排出係数を発熱割合で加重平均すれば良いことの根拠です。

  2. 匿名 より:

    なぜ、解答が重油とエタン、それぞれの燃料の排出係数の発熱割合での加重平均になるのか説明したほうがいいと思います。

    • (管理人) より:

      ご意見ありがとうございます。
      頂いたご意見も参考にしつつ、解説を整理しました。

  3. 去年大気特論落として、今年大気特論受けた人 より:

    丁寧な解説ありがとうございます
    自分の計算方法とは少しアプローチの仕方が違いますが、
    こっちの方がすごく分かりやすいです。
    といいますか5年くらい前の計算問題と比べて問題内容がすごく難しくなっていますね。
    合格こそしましたが、問4も含めてこれを50分で読み解けというのはかなり厳しいです。