R6年 水質有害物質特論 問10 問題と解説

 問 題     

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン排水の処理方法に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 酸化分解法では、適切な酸化条件下において、エチレンと塩化物イオンに分解される。
  2. 嫌気細菌によるトリクロロエチレンの分解は、塩素原子が一個ずつ外れる還元的脱塩素化反応である。
  3. 揮散法には、充塡塔方式、段塔方式、空気吹込み(曝気)方式などがある。
  4. 揮散法では、排ガス処理をすることが望ましく、その処理法として吸着法や酸化分解法がある。
  5. 活性炭吸着法において、排水中に他の有機物が含まれる場合は、吸着量は少なくなる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物の排水処理方法は、主に以下の4つです。

  • 揮散法
  • 活性炭吸着法
  • 酸化分解法
  • 生物分解法

(1)が誤りです。酸化分解法では、有機塩素化合物中の炭素、水素、塩素はそれぞれCO2、H2O、Clに分解されます。

(1)の記述にあるエチレン(C2H4)とClに分解されるのは、嫌気細菌を使った生物分解法の場合です。

(2)は正しいです。嫌気細菌によって有機塩素化合物を分解する際は、還元反応が進行します。この場合、嫌気細菌の働きにより、有機塩素化合物の塩素原子を1つずつ水素原子に変えます。

たとえばトリクロロエチレンを例に挙げると、トリクロロエチレン(C2HCl3)の塩素が1つずつ水素と入れ替わるので、ジクロロエチレン(C2H2Cl2)、ビニルクロライド(C2H3Cl)を経て、最後に塩素のないエチレン(C2H4)まで分解されます。

(3)は正しいですが、これはマイナーな内容なのでスルーでいいと思います。揮散法は、曝気により揮散させることで排水から分離する方法です。この方法はさらに、充塡塔方式、段塔方式、空気吹込み(曝気)方式に細分されます。

(4)も正しいです。揮散法により発生した排ガスは、吸着法や酸化分解法などを使って処理します。

(5)も正しいです。活性炭吸着法は、有機塩素系化合物をごく微量まで除去できますが、吸着量が少ないという欠点があります。その上、他の有機物が含まれる場合は、活性炭の表面が別の物質に占有され、有機塩素系化合物の吸着量はさらに少なくなります。

以上から、正解は(1)となります。

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