R6年 水質有害物質特論 問7 問題と解説

 問 題     

下図は、ふっ素排水に対してふっ素二段沈殿処理法を適用したフロー例である。注入する薬剤A及びBとして、最も適当なものはどれか。

  •    A         B
  1. 硫酸アルミニウム  塩化鉄(Ⅲ)
  2. 硫酸アルミニウム  水酸化カルシウム
  3. 塩化鉄(Ⅲ)     硫酸アルミニウム
  4. 水酸化カルシウム  塩化鉄(Ⅲ)
  5. 水酸化カルシウム  硫酸アルミニウム

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

ふっ素が30~50mg/L以上の高濃度の排水を処理するときには、「ふっ化カルシウム法」と「水酸化物共沈法」の2段処理を行います。この際、2つの処理法は順番が大事で、ふっ化カルシウム法を1段目に、水酸化物共沈法を2段目にします。

ふっ化カルシウム法はカルシウム剤を使って難溶性のふっ化カルシウムを生成させる方法です。高濃度のふっ素除去に有効ですが、これだけではふっ素濃度が10~20mg/L程度までしか下がりません。

排水基準は8mg/Lなので、この方法だけでは基準値を満たすには至りません。これは生成したふっ化カルシウムがわずかに水に溶けることや、コロイドを形成して浮いてしまう(=沈殿しにくくなる)ためです。

そこで、後段でアルミニウム塩(硫酸アルミニウムなど)による水酸化物共沈法を行います。アルミニウム塩はアルカリ性の水中で水酸化アルミニウムのポリマー(重合体)に変わり、このポリマーがふっ素を電気的に吸着させるので、ふっ素濃度をかなり低減でき、排水基準を満たすことが可能となります。

では、前段が必要なく、いきなり水酸化物共沈法を行えば手間が省けるかというと、そうでもありません。水酸化アルミニウムへのふっ素の吸着量は小さいため、ふっ素濃度の高い排水に対してこれをやろうとすると、大量のアルミニウム塩が必要となってしまい、規模や費用の面で現実的ではありません。

以上より、Aには「水酸化カルシウム」、Bにはアルミニウム塩の代表例である「硫酸アルミニウム」が入るので、正解は(5)となります。

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