問 題
水銀排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 硫化物法で生成する硫化水銀の沈殿は、強酸性でも溶解しない。
- 硫化物法における硫化水銀の再溶解への対策として、鉄(Ⅲ)を併用する方法がある。
- 活性炭への水銀の吸着は、pH1~6の酸性のほうが効率がよい。
- 水銀キレート樹脂の硫黄系官能基は、耐塩素性が高い。
- 有機水銀は、アルキル基の炭素数が小さいほど塩素で分解しにくい。
正解 (4)
解 説
(1)は正しいです。硫化水銀(HgS)は水に非常に溶けにくい化合物であり、強酸性条件下でもほとんど溶解しません。
(2)も正しいです。硫化物法では、硫化物イオンが過剰にある状態だと多硫化水銀となり、これの溶解度が大きいために再溶解してしまいます。そこで、塩化鉄(Ⅲ)を併用すると、過剰な硫化物イオンと反応して硫化鉄となるので過剰な硫化物を除去でき、水銀を微量まで処理することができます。
(3)も正しいです。活性炭による吸着法では、pHは1~6の酸性で水銀の吸着効率が高くなります。過去の出題例として、「活性炭を用いて吸着処理する場合、アルカリ性よりも酸性の方が吸着効果がよい。」という文章が、誤りの選択肢としてたびたび登場しています。
(4)が誤りです。水銀用のキレート樹脂として使われるのは、硫黄系(チオ系)の官能基を有するものが多いです。具体的には「ジチオカルバミド酸基」や「チオ尿素基」を配位基としてもつものが挙げられます。(詳しくは問2の解説を参照)
これらの硫黄系官能基は、塩素などの酸化剤に対して耐性が低く、容易に酸化されてしまいます。官能基が酸化されると、キレート樹脂の水銀捕捉能力が低下し、劣化します。よって、耐塩素性は低いといえます。
(5)は正しいです。塩素による塩化水銀(Ⅱ)への分解は、有機水銀化合物のアルキル基の種類によって難易度が変わり、アルキル基の炭素数が小さいほど分解しにくいです。実際、公害病である水俣病の主な原因物質は、炭素数が最も少ない(1つ)のメチル水銀でした。
以上から、正解は(4)となります。
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