R6年 水質有害物質特論 問4 問題と解説

 問 題     

クロム(Ⅵ)排水の処理方法に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. クロム(Ⅵ)の還元に使用される薬品は、一般的には亜硫酸塩又は硫酸鉄(Ⅱ)であるが、薬注制御及び薬品取り扱いの容易さなどから亜硫酸塩が使用されることが多い。
  2. クロム酸はイオン交換樹脂への選択性が低いため、強塩基性陰イオン交換樹脂による処理には適していない。
  3. 水酸化クロム(Ⅲ)の最適凝集pHはpH8前後であるが、他の重金属排水と合流して処理されるケースではpH10程度に調整する場合もある。
  4. 活性炭による処理では吸着量は低いが、クロム(Ⅵ)の検出限界以下の処理が可能である。
  5. 二クロム酸イオンの電解還元では、多量の水素イオンを消費して電解中にpHが上昇するため、酸を添加したほうが反応が進みやすい。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

(1)は正しいです。クロム(Ⅵ)排水の処理方法には、亜硫酸塩還元法と鉄(Ⅱ)塩還元法があります。ただし、鉄(Ⅱ)塩は亜硫酸塩よりも酸として強い上に腐食性もあるので、決して取り扱いが容易とはいえません。そのため、亜硫酸塩還元法が選ばれることが多いです。

(2)が誤りです。クロム酸は、クロム酸イオン(CrO42ー)や二クロム酸イオン(Cr2O72ー)として存在します。これらは陰イオンなので、イオン交換樹脂への選択性が高く、強塩基性陰イオン交換樹脂で効率的に吸着・除去することができます。

(3)は正しいです。クロムだけを考えるとpH8前後での処理が理想的ですが、亜鉛やカドミウムなど他の重金属排水と一緒に処理しようとした場合、全体の処理効率を考えてpH10程度にするほうが良い場合もあります。

(4)も正しいです。活性炭吸着法は基本的には非金属の処理方法として向いています。具体的には、有機りん(農薬)排水、PCB排水、有機塩素系化合物排水などが挙げられます。しかし、金属の中でも水銀やクロム(Ⅵ)など、一部については活性炭吸着法が有用です。

(5)も正しいです。二クロム酸イオンの電解還元では、クロム(Ⅵ)がクロム(Ⅲ)になるので、次のような化学反応式で表すことができます。

よって、多量の水素イオンを消費して電解中にpHが上昇します。そこで酸を添加すると、反応が右向きに進みやすくなります。

以上から、正解は(2)となります。

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