R6年 水質有害物質特論 問1 問題と解説

 問 題     

硫化物法による重金属排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. カドミウムの硫化物の溶解度積は、水酸化物の溶解度積に比べ非常に小さい。
  2. 凝集性の悪い硫化物は過剰硫化ナトリウムが存在すれば、多硫化物を生成し、凝集が促進される。
  3. 硫化水素の毒性、強烈な臭気、腐食性のため、排水処理に適用されている例は少ない。
  4. 硫化水素の臭気対策、凝集性の改善、操作性の向上のため、硫黄系重金属捕集剤が使用されることが多くなっている。
  5. 鉄塩を添加して過剰硫化物イオンを固定し、同時に生成する水酸化物の共沈効果により凝集性の向上を図っている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

(1)は正しいです。カドミウムの硫化物(CdS)は水に非常に溶けにくく、その溶解度積は水酸化物に比べて極めて小さいです。そのため、硫化物沈殿法を用いると、効率的にカドミウムを除去できます。

(2)が誤りです。硫化物法は、硫化物イオンと重金属イオンを反応させて不溶性の硫化物を生成させ、これを沈殿分離する方法です。これは重金属の硫化物の溶解度が低いことを利用した方法であり、pH中性領域での処理が可能という特徴があります。

ただし、硫化ナトリウム過剰存在下では再溶解することによって目的の硫化物が生成しづらいので、鉄塩を併用するのが一般的です。鉄塩を併用することで、共沈の効果によって目的の重金属(カドミウムや水銀など)が沈殿しやすくなります。

よって、(2)の場合には凝集が促進されるどころか、むしろ凝集性が悪化します。

(3)は正しいです。硫化物法は、pH中性領域での処理が可能など優れた面がある一方、硫化水素の毒性、臭気性、腐食性のため、実際の排水処理で適用されるケースは少ないです。

(4)も正しく、有機硫黄化合物など硫黄系重金属捕集剤が使用されることも増えていますが、あまり重要事項でもないため、この選択肢はスルーしても構わないと思います。

(5)は(2)の解説の通りで、これは正しいです。

以上から、正解は(2)となります。

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