R6年 汚水処理特論 問17 問題と解説

 問 題     

生物学的窒素除去法の一つとして、次式に示されるようなアンモニアと亜硝酸から窒素ガスなどを生成する細菌を用いた方法が提案されている。次式で表される反応に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. アナモックス細菌と呼ばれる細菌による反応である。
  2. 嫌気的な条件で反応が進行するため曝気を必要としない。
  3. 有機物を摂取して細胞を合成する従属栄養的な反応である。
  4. 窒素ガスのほかに硝酸などが生じる。
  5. 水素イオンが消費されることからpHは上昇する。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

本問はアナモックス反応に関する設問です。

アナモックス(Anammox)は、「Anaerobic Ammonia Oxidation」の略で、直訳すると「嫌気性アンモニア酸化」となります。アナモックス反応は汚水処理技術としてはかなり新しく開発された方法です。近年頻繁に出題されている重要テーマなので、しっかり勉強しておきたいところです。

従来の生物的硝化脱窒素法では、アンモニア態窒素を硝化して硝酸態窒素とし、これを脱窒素により窒素ガスに変えていました。硝化工程で独立栄養細菌を使い、脱窒素工程において従属栄養細菌を使っていたので、それぞれ別の槽が必要となります。

一方、このアナモックス反応であれば、嫌気性の独立栄養細菌によって、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素を直接(硝酸態窒素を経ずに)窒素ガスに変えるため、反応槽が1つで済むというメリットがあります。

また、上記では「硝酸態窒素を経ずに」と書きましたが、反応の副生成物として硝酸態窒素が少量(生成物の1割程度)つくられます。ただし、これらの生成物(窒素ガスと硝酸態窒素)は同じ反応槽で出来上がるので、段階的に反応させる従来の生物的硝化脱窒素法とは意味合いが異なります。

汚泥発生量については、アナモックス反応は生物的硝化脱窒素法に比べて工程数が少ない上に、好気性の細菌を使わないので、汚泥発生量が少なくなります。

参考までに、以下にアナモックス反応の実験式を記載します。本問では問題文に記載されていますが、過去の類題では記載されていないケースのほうが多いです。

複雑な化学反応式なので必ずしも覚えておく必要はありませんが、知っていれば選択肢を減らす役に立つ場合もあるので、余裕があれば気に留めておいてください。ただし、係数は暗記しなくて大丈夫です。


以上のアナモックスの説明を踏まえて、選択肢を見ていきます。

(1)は正しいです。問題文にはアナモックス反応と書いてありませんが、この反応式はまさにアナモックス反応を表しています。これはアナモックス細菌と呼ばれる細菌による反応です。

(2)も正しいです。アナモックス細菌は嫌気性の独立栄養細菌なので、曝気は不要です。

(3)が誤りです。この反応ではアンモニア態窒素や亜硝酸態窒素といった無機物を窒素ガスに変換するため、有機物を必要としない独立栄養型のプロセスです。よって、「有機物を摂取して細胞を合成する従属栄養的な反応」という記述は、全体的に誤っています。

(4)は正しいです。上記の説明文や化学反応式にあるように、この反応の主生成物は窒素ガスですが、副生成物として少量の硝酸態窒素も生じます。

(5)も正しいです。(4)と同様、(5)の正誤も化学反応式を見るとわかりやすいと思います。左辺にHがあるため、水素イオンが消費され、pHは上昇します。

以上から、正解は(3)となります。

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