R6年 汚水処理特論 問8 問題と解説

 問 題     

膜分離に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 精密ろ過(MF)膜は孔径が0.05~数μm程度で、微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられる。
  2. 限外ろ過(UF)膜は分子量1000~100万程度の溶質又は粒子をろ過によって分離するためのもので、多糖類やたんぱく質のような水溶性の高分子物質の除去などに用いられる。
  3. 逆浸透法では、希薄溶液側に浸透圧以上の圧力をかけ、希薄溶液中の水を濃厚溶液側に透過させる。
  4. 現在実用されている逆浸透膜には、酢酸セルロース系、芳香族ポリアミド系などがある。
  5. ナノろ過法は逆浸透法に比べて、操作圧力が低く、塩化ナトリウムの除去率が低い。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

まず、膜分離法の代表例としては以下の4つが挙げられます。

  • 精密ろ過法
  • 限外ろ過法
  • ナノろ過法
  • 逆浸透法

これらはいずれも似たようなシステムで、膜(フィルター)を水が通過する際にその膜に不純物を引っ掛けたり吸着させたりすることで、膜よりも後段に進む水をきれいにするというものです。

4つの違いは主に膜に空いている穴(孔といいます)の大きさで、孔径が大きければ粒子などの除去が、孔径が小さければ分子やイオンなどの除去ができます。以下に、それぞれの膜分離法で使用する膜と、その特徴を示します。これらは重要事項として、できるだけ覚えておくことをお勧めします。

  • 精密ろ過法:MF膜(精密ろ過膜、Microfiltration Membrane)
    数十nm~数μm程度の孔径で、微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられます。
  • 限外ろ過法:UF膜(限外ろ過膜、Ultrafiltration Membrane)
    数nm程度の孔径で、水溶性の高分子物質の除去に用いられます。
  • ナノろ過法:NF膜(ナノろ過膜、Nanofiltration Membrane)
    孔径が約1~2nmとかなり小さく、低分子有機物や金属イオンの回収などに用いられます。
  • 逆浸透法:RO膜(逆浸透膜、Reverse Osmosis Membrane)
    孔の大きさが極小(目安は1nm以下)であり、海水の淡水化などに用いられます。

ここで、選択肢(3)の文章を確認してください。

逆浸透法は上記の通り、海水の淡水化などに用いられます。

そしてその仕組みは、U字型の管の途中に半透膜(NF膜)を設置し、その膜の左右に濃厚溶液と希薄溶液をそれぞれ注いだとき、濃厚溶液側に一定以上の圧力をかけることで、濃厚溶液側の水を半透膜(NF膜)を透過して希薄溶液側に移動させるというものです。

つまり(3)の記述は反対で、薄い側が濃い側に水が流れて均一な濃度になるのではなく(これはただの浸透)、濃い側から薄い側に水が流出することでさらに濃度差が大きくなります(これが逆浸透)。

よって、(3)の記述が誤りで、文中の「希薄溶液」と「濃厚溶液」を入れ替えると正しい文章となります。

以上から、正解は(3)です。

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