R6年 大規模大気特論 問5 問題と解説

 問 題     

一般的なプルーム式・パフ式が適用できない場合の拡散濃度予測手法・モデルに関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 米国EPAが推奨したAERMODは、複雑地形や建屋影響にも対応した汎用モデルである。
  2. 複雑地形上の拡散の予測手法の一つに、風洞による模型実験があるが、安定あるいは不安定な気層の再現に困難性がある。
  3. 広域の光化学大気汚染モデルは、一般に数値解法を用いている。
  4. 数値解モデルの一つである格子モデルは、間隔が10~100km程度の格子状の計算点で予測領域を覆うため、建屋周辺などの局所的な濃度予測には使用されない。
  5. 気候変動の予測にも、長期の天気予報に用いられる全球数値解モデルが活用されている。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

(1)は正しいですが、ややマイナーなのでスルーしても構いません。AERMODは、大気境界層内の乱流構造に基づく拡散の概念を組み込んだモデルであり、複雑地形や建屋影響にも対応した汎用モデルです。

(2)も正しいです。風洞実験は、模型を使って地形や建物による影響を再現する手法です。実物大と比べるとはるかに小さい模型を使うので、パスキルの大気安定度のうち最も普通である「中立」条件なら再現しやすいですが、両極端である「安定」や「不安定」な気層を再現するのは難しいです。

(3)も正しいです。拡散モデルには大きく、「数値解モデル」と「解析解モデル」とがあり、光化学大気汚染モデルは数値解モデルに属します。各種の拡散モデルを体系的に覚えておきたい方は、R5年 問5の解説を参照してください。

(4)が誤りです。冒頭の「数値解モデルの一つである格子モデル」というのは正しいですが、格子の間隔は特に「10~100km程度」と決められているわけではありません。

広範囲を扱いたいなら10~100km程度にしてもよいですが、中程度なら数kmの格子とすることも多く、また、建屋周辺などの局所的な濃度予測に用いるときは数cm~数mにして使うこともできます。このように、格子間隔は目的やスケールに応じて自由に設定することができます。

(5)は正しいです。全球とは地球のことで、全球数値解モデルは、大気、海洋、陸地、氷雪などの地球システム全体をシミュレートするモデルです。このモデルは、長期の天気予報や気候変動の予測に用いられます。

以上から、正解は(4)となります。

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