R6年 大規模水質特論 問1 問題と解説

 問 題     

富栄養化が進んだ閉鎖性海域における化学的酸素消費(要求)量(COD)に関する記述として、不適切なものはどれか。

  1. CODは水系に存在する有機物汚染の指標として採用され、水域類型別にCODの環境基準が設定されている。
  2. 水質環境基準を満たすため、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海については、総量規制が導入されている。
  3. CODの起源は、工場や河川から流入した外部負荷と、当該水域で生産された内部生産に大別できる。
  4. 植物プランクトンの成長によるCODの内部生産は、夏季に表層で活発になる。
  5. 一般にCODの外部負荷は内部生産より十分大きいため、CODの空間分布は外部負荷の物理拡散モデルにより表現することができる。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

(1)は正しいです。CODは水中の有機物汚染の指標として用いられていて、湖沼や海域の水域類型に応じてCODの環境基準が設定されています。

(2)も正しいです。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海は閉鎖性海域であり、富栄養化が問題となっています。そのため、これらの海域では、水質環境基準を達成するために「COD・窒素・りん」の3項目について総量規制が導入されています。

(3)も正しいです。CODの起源は以下の2つに分類されます。

  • 外部負荷:工場排水、生活排水、河川からの流入など、外部から海域に流入する有機物
  • 内部生産:海域内での植物プランクトンなどの一次生産により生成される有機物

(4)も正しいです。夏季は水温の上昇と日照時間の増加により、植物プランクトンの光合成活動が活発になります。特に表層では光が十分に届くので植物プランクトンの増殖が促進され、有機物の内部生産が増加するため、CODが高くなります。

(5)が誤りです。広い海の場合には(5)の記述のようなことが成り立ちますが、閉鎖性海域では外洋との水の交換が悪いことから、内部生産の寄与が大きくなります。

そのため、外部負荷の物理拡散モデルでは閉鎖性海域のCODの空間分布を表現することはできず、実際には、流体力学モデルと結合した生態系モデルが用いられます。

以上から、正解は(5)となります。

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