R5年 水質有害物質特論 問7 問題と解説

 問 題     

ふっ素排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. ふっ化カルシウム法では、カルシウム剤として水酸化カルシウムを使用する場合が多い。
  2. ふっ化カルシウム法において、沈殿しにくいコロイド状ふっ化カルシウムを低減するための対策として、沈殿汚泥を反応槽に返送する汚泥循環法がある。
  3. アルミニウム塩を添加する水酸化物共沈法における最適pHは6~7である。
  4. ふっ化カルシウム法と水酸化物共沈法を併用する二段沈殿処理法では、通常、水酸化物共沈法を1段目とする。
  5. ふっ素吸着樹脂は、水酸化ナトリウムにより再生できる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

(1)は正しいです。ふっ化カルシウム法では、カルシウム剤として水酸化カルシウムを使用する場合が多く、処理対象がふっ素のみである場合は、pHは7付近が最適です。

(2)も正しいですが、出題頻度から見ればあまり気にしなくてもいい選択肢だと思います。凝集沈殿において、汚泥循環法を用いるとコロイド状ふっ化カルシウムを低減する効果があります。

(3)も正しいです。(1)の解説でふっ化カルシウム法の最適pHは7付近と書きましたが、アルミニウム塩を添加する水酸化物共沈法における最適pHは6~7なので、どちらも中性付近と覚えておけばよいと思います。

(4)が誤りです。この記述は反対で、ふっ化カルシウム法と水酸化物共沈法を併用する二段沈殿処理法では、通常、ふっ化カルシウム法を1段目とし、水酸化物共沈法を2段目とします。これは重要事項として押さえておくべき知識です。

ふっ化カルシウム法はふっ素除去の有用な処理方法のひとつですが、これだけではふっ素濃度が10~20mg/L程度までしか下がりません。これは、生成したふっ化カルシウムがわずかに水に溶けることや、コロイドを形成して浮いてしまう(=沈殿しにくくなる)ためです。

一方、アルミニウム塩による水酸化物共沈法の場合、水酸化アルミニウムにふっ素を吸着させることになりますが、水酸化アルミニウムへのふっ素の吸着量は小さいため、ふっ素濃度の高い排水に対してこれをやろうとすると、大量のアルミニウム塩が必要となってしまい、現実的ではありません。

よって、ふっ素が30~50mg/L以上の高濃度の排水を処理するときには、まずはふっ化カルシウム法でふっ素濃度10~20mg/L程度まで下げて、その後、アルミニウム塩による水酸化物共沈法を使って排水基準(8mg/L)以下まで処理するのが望ましいです。

(5)は正しいです。記述の通り、ふっ素吸着樹脂は水酸化ナトリウムによって再生できます。これも(2)と同様、出題頻度は低いです。

以上から、正解は(4)となります。

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