問 題
生物的脱りん法の原理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 前段の嫌気槽と後段の好気槽を経て、りんを高濃度に蓄積した活性汚泥を余剰汚泥として系外に取り除くことで行われる。
- 嫌気状態では、細胞中のポリりん酸が加水分解されて正りん酸として混合液中に放出される。
- 嫌気状態では、蓄積したPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)などの有機物を用いた細胞増殖が行われる。
- 好気状態では、正りん酸を混合液中から摂取し、ポリりん酸として再蓄積する。
- 好気状態では、嫌気状態での放出量以上にりんを蓄積するため、活性汚泥のりん含有量が増大する。
解 説
生物的脱りん法の出題は頻出ですが、その概要や計算問題ではなく詳細な知識が問われる問題は珍しいです。実務でこれに携わっている受験者の方はともかく、そうでなければ馴染みの薄いところだと思うので、出題頻度から考えると、本問は捨て問題扱いにしてしまって構わないと思います。
ただし、(1)と(5)は基本的な内容なので、運任せにするとしても(2)~(4)の3択のいずれかを選びたいところです。
生物的脱りん法は、活性汚泥によるりんの過剰摂取現象を利用するもので、そのフローは次のように図示されます。
上図において、嫌気槽では細菌に取り込まれたりんが水中に溶け出します。一方、好気槽では反対に細菌がりんを過剰に取り込んで、りん含有量の高い汚泥となります。その後、沈殿池で汚泥を沈めて、一部は余剰汚泥として系外へ排出し、残りは返送汚泥として嫌気槽へ戻します。
以上より、(1)と(5)はともに正しい記述だと判断できます。
ここからはマイナーな話になるので、参考程度に読んでください。
(2)に関して、嫌気状態では、細胞中のポリりん酸が加水分解されて正りん酸として混合液中に放出されます。一方で、混合液中の有機物は細胞内に摂取されます。よって、(2)は正しいです。
(3)に関して、上記の通り、嫌気状態では正りん酸を放出しながら有機物を摂取しますが、摂取した有機物はPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)などの形で細胞内に貯蔵されます。嫌気状態ではこれが消費されることはないので、(3)の「有機物を用いた細胞増殖が行われる」という記述は誤りです。
(4)に関して、好気状態において、嫌気状態のときに蓄積したPHB(ポリ-β-ヒドロキシ酪酸)を酸化・分解し、これで得たエネルギーを使って嫌気状態のときに放出した以上の正りん酸を混合液中から摂取し、ポリりん酸として再蓄積します。よって、(4)は正しいです。
以上から、正解は(3)となります。
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