問 題
富栄養化が進んだ閉鎖性海域に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 外洋との水の交換が悪く、河川等から流入する汚染物質が長期間滞留しやすい。
- 夏季の成層期に、表層では植物プランクトンの成長に適した環境条件になり、CODの内部生産が活発になる。
- 現在、表層の溶存酸素量が水質環境基準の生活環境項目に追加されている。
- 夏季の成層期に、下層に貧酸素水塊が形成されやすい。
- 夏季の成層期に、海底堆積物は嫌気的な環境になりやすい。
解 説
(1)は正しいです。閉鎖性海域は外洋との水の交換が悪いため、河川等から流入する汚染物質がいつまでも拡散されずに滞留しやすいです。
(2)も正しいです。夏季の成層期に、太陽光が届く表層では植物プランクトンの成長に適した環境条件になりやすいため、CODの内部生産が活発になります。
(3)が誤りです。2016(平成28)年に水質環境基準の生活環境項目として追加されたのは、「表層の溶存酸素量」ではなく「底層の溶存酸素量」です。そもそも、表層は海面に近いので、酸素量が不足していたら空気から供給されます。そのため、表層の溶存酸素量が著しく減少するという事態にはなりません。
(4)は正しいです。以下、夏期の下層で溶存酸素濃度が低くなるメカニズムを説明します。
まず最初に確認しておきますが、温かい水は上へ、冷たい水は下へいくという性質があります(空気も一緒で、暖気は上へ、寒気は下へ移動します)。よって、夏の日差しによって表層の水温は温かくなるので、表層の水は水面近くにとどまり、水の冷たい下層との混合が起こりにくくなっています。
よって、夏期に成層が強化されると、下層では上層からの溶存酸素の供給が制限されるので、貧酸素水塊が形成されます。
一方、表層について考えると、閉鎖性水域の表層には工場排水などから栄養塩類などが潤沢に供給され、また、夏期は日光も充分に届くため、光合成が盛んになります。よって、夏期の表層は植物プランクトン生産には好条件となっています。
(5)も正しいです。(4)の解説の通り、夏季は下層で溶存酸素濃度が低くなるため、海底堆積物についても嫌気的な環境になりやすいです。
以上から、正解は(3)となります。
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