R4年 水質概論 問9 問題と解説

 問 題     

有害物質の人体影響に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 生体内に水銀が侵入した場合、体内全蓄積量あるいは臓器内蓄積量が閾値を超えなければ、長期間体内に存在しても障害を与えることはない。
  2. 重金属の生体内への侵入経路には、吸入摂取、経口摂取、経皮吸収があるが、侵入経路の違いによって毒性の発現が異なることはない。
  3. 有害性金属が複合して生体内に作用する場合、金属間の相互作用により毒性が弱められることがあり、この現象は拮抗作用といわれる。
  4. カドミウム、水銀、亜鉛、鉛などの重金属の暴露により肝臓などで誘導生合成されるメタロチオネインは、重金属の解毒作用の役割を果たしている。
  5. 生物学的半減期の長いものは、排泄されにくいので、毒性が現れやすい。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)は正しいです。水銀のように閾値が存在する物質であれば、無毒性量(NOAEL)以下の蓄積量で障害が出ることはありません。

(2)が誤りです。重金属に限らず様々な物質において、侵入経路によって健康影響は大きく異なる場合があります。薬にも経口剤(飲み薬)や貼付剤(貼り薬)などがありますが、これは物質の侵入経路によって体内に与える影響が異なることを利用している例といえます。

(3)は正しいです。体内で複数の金属が相互作用すると、毒性が強く出ることもありますが、逆に毒性が弱められることもあります。拮抗作用という名称はややマイナーな知識ですが、文章全体に矛盾もないため、これを知らなくても正しい文章だと判断していいと思います。

(4)も正しいです。肝臓は様々な有害物質の解毒・分解を担っている臓器です。記述の通り、重金属に暴露されると生合成されるメタロチオネインは、重金属の毒性を弱める働きをしています。

(5)も正しいです。ある有害物質の生物学的半減期の長いということは、いつまでも生体内に残っている(=排泄されにくい)ということなので、毒性が現れやすいといえます。

以上から、正解は(2)です。

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