R3年 水質概論 問3 問題と解説

 問 題     

水質汚濁防止法に規定する改善命令に関する記述中、(ア)~(オ)の中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

( ア )は、( イ )を排出する者が、その汚染状態が当該特定事業場の( ウ )において排水基準に適合しない( イ )を排出( エ )と認めるときは、その者に対し、期限を定めて特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは汚水等の処理の方法の改善を命じ、又は特定施設の使用若しくは( イ )の排出の一時停止を命ずる( オ )。

  •   ア     イ    ウ     エ       オ
  1. 市町村長   汚水  排水口  するおそれがある ことができる
  2. 都道府県知事 汚水  敷地境界 するおそれがある ものとする
  3. 市町村長   排出水 敷地境界 した       ものとする
  4. 都道府県知事 排出水 排水口  するおそれがある ことができる
  5. 都道府県知事 排出水 排水口  した       ものとする

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

問題文は、水質汚濁防止法第13条(改善命令等)1項からの出題です。この項の本文は以下の通りとなります。

都道府県知事は、排出水を排出する者が、その汚染状態が当該特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出するおそれがあると認めるときは、その者に対し、期限を定めて特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは汚水等の処理の方法の改善を命じ、又は特定施設の使用若しくは排出水の排出の一時停止を命ずることができる

( ア )に関して、水質汚濁防止法に基づく届出や報告は都道府県知事に対して行います。反対に、事業所に対して改善命令や指導を行う場合も、多くの場合は都道府県知事が行うことになっています。よって、( ア )には「都道府県知事」が入ります。

( イ )には「汚水」か「排出水」が入りますが、両者の言葉の意味は異なるので注意してください。これらは、水質汚濁防止法第2条(定義)の6項と7項で明確に定義されています。

  • 汚水 :特定施設から排出される汚れた水、廃液
  • 排出水:特定施設を設置する工場や事業場から公共用水域に排出される水

上記の通り、汚水は有害物質がそれなりに含まれている水で、それを汚水処理設備である程度きれいにしたものが排出水です。汚水はどんなに汚れていても構いませんが、公共用水域に排出される段階である排出水は、排水基準値を満たす水質でなくてはなりません。

よって、( イ )には「排出水」を入れるのが妥当だと判断できます。

( ウ )は排出水を排出する場所という意味で「排水口」を選ぶのが正しいです。騒音や振動、悪臭などは敷地境界で測定しますが、水は必ずしも敷地境界でサンプリングできるわけではないので、排水口でサンプリングした排出水に排水基準が適用されます。

( エ )と( オ )はともに法律の条文でよくある言い回しですが、それぞれ「するおそれがある」と「ことができる」が入ります。

法律の条文で物事をかっちり決めてしまうと、複雑な事態に柔軟に対応することができません。そのため、ふわっとした表現に留めておいて、解釈次第で柔軟に対応できるようにしている文章がよく見られます。たとえば、「◯◯等」といった文言が多用されるのがその一例です。

よって、( エ )では排水基準を明確に超えたときはもちろん、そうでない場合でも悪質だと判断できる事業場には改善命令を出すことができるよう、「するおそれがある」という表現が使われます。

また、( オ )では反対に、排水基準を超過したからといって必ずしも改善命令を出すわけではなく、状況次第では指導や助言で済ませる場合もあるので、「ことができる」という表現になっています。

以上から、正解は(4)です。

コメント