問 題
水酸化物法によるカドミウム及び鉛排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。
- カドミウムは、強アルカリ性では水酸化物イオンと錯体をつくって再溶解する。
- カドミウムと酒石酸との錯体は安定であり、水酸化物法による処理は困難である。
- 鉛化合物には2価の鉛化合物と4価の鉛化合物があり、排水中では主に2価イオンとして存在する。
- 鉛は、強アルカリ性では水酸化物イオンと錯体をつくって再溶解する。
- 鉛とアンモニアとの錯体は安定であり、水酸化物法による処理は困難である。
正解 (5)
解 説
(5)に関連して、カドミウムイオンは有機酸やアンモニア、シアン化物イオンと安定した錯体を形成します。そのため、これらを水酸化物法での処理しようとしても水酸化物にならず、その処理は困難です。しかし、それはカドミウムの話であって、鉛の場合はこのような安定した錯体を形成しません。よって、これが誤りの記述です。
この問題はほかの選択肢も重要事項が書かれているため、ぜひ内容を確認しておいてください。
(1)はやや難しいので、最後に解説します。試験対策の重要度としては(2)~(5)のほうが重要です。
(2)について、くえん酸などの有機酸は多くの金属と錯体を形成しますが、特にカドミウムとは強く結合し、安定した錯体を作ります。そこで、水酸化物法で処理しようとしても錯体からカドミウムを引き離すことができず、沈殿分離することができません。
(3)で、鉛化合物中の鉛は2価または4価として存在しますが、2価のほうが安定で、排水中では2価イオンとして存在します。そのため、排水処理ではこの2価イオンをターゲットとした方法を用いることになります。
(4)で、鉛は両性金属なので、酸性条件で溶けるのはもちろんのこと、アルカリ性条件でも水に溶けます。両性金属といえば、アルミニウム、鉛、亜鉛、クロム、スズが挙げられます。
最後に(1)について、カドミウムは両性金属ではないので、アルカリ性条件下では不溶性のCd(OH)2となり、沈殿除去できます。しかし、強力なアルカリ条件下においてはさらに水酸化物イオンが付き、[Cd(OH)4]2‐の錯体となって再溶解します。
以上から、正解は(5)です。
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