H29年 水質有害物質特論 問3 問題と解説

カドミウム及び鉛排水処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. pH8以上のアルカリ性では、水酸化鉛は再溶解する。
  2. カドミウム排水に対して水酸化物法を適用するとき、塩化鉄(Ⅲ)を使って共沈処理すると効果がある。
  3. EDTAを含む鉛排水を処理するときは、Fe+Ca塩法などの置換法が有効である。
  4. くえん酸などの有機酸とカドミウムとの錯体に対しては、水酸化物法を適用できる。
  5. カドミウム排水に対して硫化物法を用いるときは、pH中性域で鉄塩を併用する。

 

 

 

 

 

正解 (4)

(1)に関して、鉛は両性金属なので、酸性条件で溶けるのはもちろんのこと、アルカリ性条件でも水に溶けます。よって、これは正しいです。

(2)で、塩化鉄(Ⅲ)は優れた凝集剤であり、カドミウムと共沈処理するとカドミウムが効率よく処理できます。つまり、これも正しいです。また、塩化鉄(Ⅲ)は鉛やほかの重金属にも有効で、多くの金属類に対して共沈処理が適用できます。

(3)に関して、Fe+Ca塩法は以下のような2段階の反応で構成されます(例として重金属を鉛Pbとしていますが、ほかの重金属でも同様です)。Fe+Ca塩法という名前の通り、1段階目でFeを、2段階目でCaを使っています。

  • 1段階目(酸性条件)

  • 2段階目(塩基性条件)

よって、(3)も正しい記述です。

(4)について、有機酸は多くの金属と錯体を形成しますが、特にカドミウムとは強く結合し、安定した錯体を作ります。そこで、水酸化物法で処理しようとしても錯体からカドミウムを引き離すことができず、沈殿分離することができません。よって、この場合は水酸化物法を適用できないため、これが誤りの選択肢です。

(5)で、カドミウム排水を硫化物法で処理する場合、鉄塩を併用すれば、pH中性域で低濃度まで処理できます。よって、これも正しいです。

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