H28年 水質有害物質特論 問4 問題と解説

水銀排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 硫化物法においては、硫化物イオン(S2-)濃度を常に大過剰とすることにより、生成した硫化物の再溶解を防ぐ。
  2. 硫化物法において、硫化ナトリウムと塩化鉄(Ⅲ)を併用すると、水銀を微量まで処理することができる。
  3. 活性炭を吸着剤として用いるときは、酸性の方が吸着効率がよい。
  4. コロイド状水銀を水銀キレート樹脂で除去するときは、次亜塩素酸ナトリウムを添加してコロイド状水銀をイオン化させてから吸着させる。
  5. 有機水銀排水を硫化物法で処理するときは、塩素によって酸化分解した後に処理する。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

硫化物法は、硫化物イオンと水銀イオンを反応させて不溶性の硫化水銀を生成させ、これを沈殿分離する方法です。しかし、硫化物イオンが過剰にある状態だと多硫化水銀となり、これの溶解度が大きいために再溶解してしまいます。よって、(1)のように大過剰とすることはできません。

また、本来は小過剰であっても多硫化水銀は少し生成してしまいますが、(2)にあるように塩化鉄(Ⅲ)を併用することで、硫化物イオンを硫化水銀に対して小過剰に保持することができるようになります(ちなみに、(2)では塩化鉄(Ⅲ)となっていますが、塩化鉄(Ⅱ)でも同様の効果があります)。

これは、硫化鉄の溶解度が硫化水銀の溶解度よりも大きいため、水銀が溶解するより先に鉄が溶解するので、水銀のほうは硫化物のままでいられる、という理屈です。

余談ですが、理想的には小過剰ではなく水銀量に見合った量の硫化物イオン濃度とすれば無駄がありません。しかし、実際の排水処理では負荷変動があるため、常にぴったりの硫化物イオン濃度にしておくことは不可能なので、濃いめの水銀濃度となったときでもしっかり対応できるように小過剰の硫化物イオン濃度にしておくというわけです。

そして、小過剰の硫化物イオンが及ぼす悪影響を抑えるのが、塩化鉄(Ⅱ)や塩化鉄(Ⅲ)の役割です。

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