化学物質のリスク評価に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 化学物質によるリスクは、危険・有害性と暴露量をともに考慮する必要がある。
- 無影響量(NOEL)は、閾値が存在する化学物質に関して、動物実験から求められる、その投与量以下では影響が認められない量である。
- 耐容一日摂取量(TDI)は、人が一生涯摂取し続けても悪影響を生じないと考えられる体重1kg当たりの1日摂取量である。
- TDIは、様々な感受性を持つ動物種を用いた試験で得られたNOELの平均値を、不確実係数で割ったものである。
- 不確実係数には通常100が用いられるが、この値は動物から人へ外挿するときの種差による係数を10、個体差による係数を10と見込んだものである。
正解 (4)
解 説
「NOELの平均値」というのが誤りで、正しくは「NOAELの最小値」です。
NOELはNo Observable Effect Levelの略で、(2)の説明の通りです。一方、NOAELはNo Observable Adverse Effect Levelの略で、無毒性量と訳されます。何かしらの影響が出るか、悪影響(毒性)が出るかの違いです。TDIでは、NOAELを基準にして計算しています(ただし、NOAELの値を出すことが困難な場合は、NOELを使うこともあります)。
また、NOAELを算出する際に様々な動物を使って試験をします(たとえばマウスとウサギとイヌ)が、ある化学物質が、マウスに対して全然悪影響が出ないとすると、いくらウサギやイヌが少量で毒性が現れたとしても、NOAELの平均値が上がってしまいます。
NOAELの数値が高いということはTDIも高くなり、ヒトがその化学物質を多く摂取しても大丈夫ということになってしまいますが、それでは都合が悪いです。実際にウサギやイヌには強い毒性があるので、ヒトにも毒性がないとは言えないためです。なので、各々の動物のNOAELの中で最も小さい値を真のNOAELとして採用することで、安全側で考えることができます。
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