問 題
ガス吸収における二重境膜説に関する記述として、誤っているものはどれか。
- ガス側にも液側にも乱れのない薄い境膜が形成される。
- 気液界面での物質移動の抵抗は無視できる。
- 気液界面では常に非定常状態で吸収が行われる。
- ガス境膜内での被吸収物質の拡散の推進力は、ガス本体と界面の分圧の差である。
- 液境膜内での被吸収物質の濃度は、界面から液本体に向かって直線的に変化する。
正解 (3)
解 説
二重境膜説の内容に関する出題は珍しいので、あまり馴染みがない場合には捨て問題扱いにしてしまっても構わないと思います。ただし、稀に出題されることもあるので、余裕があれば以下の解説を参考に、少し気に留めておいてください。
二重境膜説は、ガス吸収の速度を考える場合に有用な学説です。
この説では、ガス側から液側に物質が吸収される際、その間に1つの境界面ができるのではなく、ガス側にも液側にも乱れのない薄い境膜が形成されるとのことです。「二重境膜説」という名前は、ガス側と液側の間に境界となる膜が2つできることに由来します。
よって、(1)の記述は正しいです。
ここで、2つの境膜が接するところを気液界面といいますが、気液界面では定常状態で吸収が行われるものとし、ここでの物質移動の抵抗は無視できるものとして吸収速度の式を組み立てています(計算式は複雑であり、かつ、試験対策に関係しなさそうなので割愛します)。
よって、(2)は正しく、(3)の「常に非定常状態」が誤りであることがわかります。ここは「非定常状態」ではなく、「定常状態」とするのが正しいです。
また、境膜内での被吸収物質の拡散の推進力は、ガス境膜内と液境膜内でそれぞれ次のようになります。
- ガス境膜内:ガス本体と界面の分圧の差に応じて直線的に変化する
- 液境膜内 :界面と液本体の溶質の濃度差に応じて直線的に変化する
よって、(4)と(5)も正しいです。
以上から、正解は(3)となります。
くり返しになりますが、この問題は出題頻度の低いテーマなので、優先度としては低いものと考えて構いません。
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