R2年 大気特論 問9 問題と解説

 問 題     

石灰スラリー吸収法のスケーリング防止策に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 吸収液にあらかじめ石こうの種結晶を加える。
  2. 吸収塔内部は液のよどみの少ない単純構造とする。
  3. 吸収塔内部の構造物には表面の滑らかな材料を用いる。
  4. 吸収塔下部に滞留時間の短い反応槽を設ける。
  5. デミスターは運転中に定期水洗を行う。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

石灰スラリー吸収法では、吸収塔で生成した亜硫酸カルシウムや最終生成物である石こうがあまり水に溶けないことから、これらが吸収塔の内部に固着してしまうスケーリングが問題となります。

このスケーリングを防止するため、以下のような対策がとられています。

  1. 吸収液にあらかじめ石こうの種結晶を加えることなどによって、石こうの装置材料表面への付着を抑制する。
  2. 吸収塔内部は、液のよどみのない単純構造とするほか、表面の滑らかな材料を用いる。
  3. 吸収塔下部の反応槽における滞留時間を長くし、吸収液の石こう過飽和度を常に低い状態に保つ。
  4. 吸収塔内部に乾き箇所や吸収液のよどみが生じないように液分散ノズルを配置し、適切な液ガス比を維持する。
  5. デミスターでは吸収液のよどみと乾き箇所が生じやすいので、運転中の定期水洗によって固結を予防する。

上記と選択肢を見比べると、選択肢(1)は上記1に、選択肢(2)と(3)は上記2に、選択肢(5)は上記5と同じ内容になっていることがわかります。

一方、選択肢(4)は上記3に対応していますが、滞留時間の長短が異なっています。

(4)のように反応槽における滞留時間を短くすると、ガス中のSO2と吸収液との反応が安定した条件で行われず、石こう過飽和度が高くなりやすいです。

過飽和状態(=ある物質が、本来の溶解度以上に水に溶けている状態)にある石こうは、のちに飽和状態に戻りますが、このとき過飽和していた分の石こうが結晶として析出することになり、これがスケーリングと原因となります。

よって、過飽和状態というのはスケーリング防止策の観点から見れば不利な条件であるため、(4)の記述が不適切であると判断できます。正しくは、石こう過飽和度が低くなるように、「吸収塔下部に滞留時間の長い反応槽を設ける。」とするべきです。

よって、正解は(4)となります。

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