R2年 水質有害物質特論 問15 問題と解説

 問 題     

ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)において、検定に用いられる前処理法と測定対象物質との組合せとして、誤っているものはどれか。

  •  (前処理法)      (測定対象物質)
  1. パージ・トラップ法  テトラクロロエチレン
  2. ヘッドスペース法   PCB
  3. 溶媒抽出法      シマジン
  4. 固相抽出法      チオベンカルブ
  5. 活性炭抽出法     1,4‒ジオキサン

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

揮発性有機化合物を分離、濃縮するための前処理方法は、以下の3つです。

  • パージ・トラップ法
  • ヘッドスペース法
  • 溶媒抽出法

また、農薬を分離、濃縮するための前処理方法は、以下の2つです。

  • 溶媒抽出法
  • 固相抽出法

上記を知識として覚えておけば対応できる問題も多いので、なるべく覚えておいてください。

(1)のテトラクロロエチレンは揮発性有機化合物なので、パージ・トラップ法が使えます。

(2)のPCBは揮発性有機化合物でも農薬でもありませんが、揮発しにくい比較的分子量の大きい物質という意味では農薬に近いです(有機構造としては)。そのため、ヘッドスペース法が使えず、実際には溶媒抽出法が多く使われます。

(3)のシマジンは除草剤として使われる物質です。上記の農薬用の前処理方法が使えるので、溶媒抽出法は正しいです。

(4)のチオベンカルブも(3)のシマジンと同じく除草剤です。よって、これに固相抽出法を用いるのも正しいです。

(5)の1,4‒ジオキサンは次に示す構造をしている、六員環のエーテルです。

多くの化合物と同様に有機溶媒に溶けやすいですが、一方で、低分子ながら酸素原子を2つ有しているので、水分子の水素原子との水素結合を形成するため、水にも溶けやすいです。

このように1,4‒ジオキサンだけはほかの有機化合物とはやや異なる特徴をもっていて、その前処理方法も特殊で、「活性炭抽出」となります。この試験においては、前処理として活性炭抽出を使うのは1,4‒ジオキサンだけと考えて大丈夫です。

以上から、正解は(2)となります。

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