R1年 汚水処理特論 問5 問題と解説

 問 題     

各種金属イオンの溶解度とpHの関係は下図のように表わされる。図から読み取れる金属イオンを含む排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 2価の鉄は、pH11付近でほぼ完全に除去される。
  2. 3価の鉄は、pH4付近でほぼ完全に除去される。
  3. アルミニウムは、pH6以上でほぼ完全に除去される。
  4. 銅は、pH9付近でほぼ完全に除去される。
  5. 亜鉛は、pH9~10の範囲でほぼ完全に除去される。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

多くの金属は酸性の水に溶ける一方でアルカリ性の水には溶けません(例外となる金属もあります)。よって、排水のpHをどんどん上げていけば、排水に溶けている各種の金属量はどんどん下がっていきます。図の下端である10-8くらいまで下がれば、ほぼ完全に除去されたといえます。

上記を踏まえて、選択肢を見ていきます。

(1)で、Fe2+は図の下端のpHが10.5くらいです。よって、pH11なら完全に除去されたといえるいので、これは正しいです。

(2)と(4)も同様の考え方ができます。つまり、Fe3+とCu2+の線の下端を見ると、それぞれ3.7と8.3くらいに見えるので、Fe3+はpH4、Cu2+はpH9で完全に除去したと判断できます。

一方、解説の冒頭に書いた例外となる金属というのが(3)のアルミニウムや(5)の亜鉛です。これらは両性金属と呼ばれるもので、酸にもアルカリにも溶ける性質を持ちます。

このような両性金属に分類される金属として、以下の5元素を覚えておいてください。

  • アルミニウム
  • 亜鉛
  • スズ
  • クロム

ここで(3)のアルミニウムを確認すると、図中にAl3+とH2AlO3の2種類あることがわかります。つまり、酸性下ではAl3+になっていて、pH6に近づくにつれAl3+は水に溶けなくなっていくのですが、一方でpH4あたりからじわじわとH2AlO3の形で再溶解していくということです。

全てのpH域で少なくとも一方のアルミニウムが少しは溶けている状態なので、アルミニウムを完全に除去することはできません。よって、(3)の文章が誤りで、これが正解です。

最後に(5)の亜鉛を確認すると、こちらもアルミニウムと同様にZn2+とHZnO2の2種類があります。しかし、今度はpH9~10の範囲でどちらの線もほぼ下端まで近づいていることがわかります。

よって、pH9~10の範囲にうまいこと調整できれば、Zn2+もHZnO2も沈殿させてほぼ完全に除去することができます。そのため、(5)は正しいです。

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