R6年 汚水処理特論 問7 問題と解説

 問 題     

イオン交換に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 当モル数のナトリウムイオン(Na)あるいはカルシウムイオン(Ca2)がH形の強酸性陽イオン交換樹脂に吸着された場合、イオン交換樹脂より放出される水素イオンのモル数は等しい。
  2. 固定層のイオン交換装置では、破過点まで吸着できるイオン量を意味する貫流容量は、イオン交換可能な全活性基の量を表す全イオン交換容量と等しい。
  3. イオン交換の対象となる原水は、イオン濃度が10000mg/L程度以上の濃厚なものが適している。
  4. 通水速度を表す空間速度は、流量を充塡樹脂層の体積(樹脂と樹脂の間の空隙を含む)で除して求められる。
  5. イオン交換樹脂の再生剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、オゾン水などが用いられる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

(1)は誤りです。Naは1価なので、Hと1:1の割合でイオン交換します。一方、Ca2+は2価なので、1モルのCa2+で2モルのHとイオン交換できます。よって、NaとCa2では、イオン交換樹脂から放出されるHのモル数は異なります。

(2)も誤りです。全イオン交換容量は、「破過点まで吸着できるイオン量」ではなく「イオン交換でき得る交換基の数」です。つまり、全イオン交換容量はあくまで理論的な計算値であり、実際にはもっと早く破過してしまうことが多いです。

破過点について、ある条件で通水していて一定時間を超えると、急に処理水濃度が原水濃度に近づいてしまうことがあります。これは充塡層が吸着飽和に達し、効果を発揮しなくなったためで、この飽和に達した点のことを破過点といいます。

(3)も誤りです。イオン交換法は優れた処理方法ではありますが、コストが高いのが弱点です。

よって、微量に(イオン濃度が1000mg/L程度以下)含まれる重金属イオンなどを厳密に除きたいときなどにはその強みを発揮しますが、高濃度の原水をざっと処理するときなどは、低コストの電気透析法や逆浸透法のほうが有益です。

(4)が正しいです。ややマイナーな知識ですが、イオン交換処理における通水速度は、通常、流量[m3/h]を充塡樹脂量[m3]で除した空間速度[h-1]で表されます。

(5)は誤りです。イオン交換樹脂の再生には、強酸や強アルカリ、塩化ナトリウム(食塩)などの濃厚溶液が用いられます。次亜塩素酸ナトリウムやオゾン水のような酸化力のあるものを使うと、イオン交換樹脂を劣化させる可能性が高いため、これらは不適です。

以上から、正解は(4)となります。

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