R6年 大規模水質特論 問4 問題と解説

 問 題     

海洋生態系モデルにおける植物プランクトンの増殖速度の計算において、最大可能比増殖速度が0.60d-1、光の制限項が0.80と求められた。

栄養塩の制限は、ミハエリス-メンテンの式で計算するものとし、窒素濃度は半飽和定数に等しく、りんの濃度は半飽和定数の2倍だった。

このとき、比増殖速度(d-1)はいくらか。ただし、栄養塩の制限はリービッヒの最小律に従い、けい酸の制限は無視できるものとする。

  1. 0.12
  2. 0.24
  3. 0.32
  4. 0.48
  5. 0.64

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

本問は例年の類題に比べて問題文で提示されるヒントが少なく、やや難易度の高い出題といえます。悪問・奇問というわけではないので、余裕があれば押さえておきたい知識ですが、ご自身の学習状況や理解度によっては後回しにしても構わないと思います。

まず、植物プランクトンの比増殖速度は、最大可能増殖速度(ポテンシャル増殖速度)、光の制限項、栄養塩制限項の積として計算されます。これは重要公式として押さえておきたい知識です。

  • G:比増殖速度 [d-1]
  • Gmax:最大可能増殖速度(ポテンシャル増殖速度) [d-1]
  • LTLIM:光の制限項
  • (NP)LIM:栄養塩制限項(窒素またはりんの制限項)

上式において、最後の項である栄養塩制限項は、窒素による制限(NLIM)とりんによる制限(PLIM)のうち、小さいほうの値となります。光合成には窒素もりんも必要ですが、どちらか一方だけ過剰にあっても他方の余剰分の使い道がないため、窒素とりんのうち少ないほうに合わせた光合成しか行なえないということです。

窒素とりんのどちらが栄養塩制限項になるかについては、NLIMとPLIMをそれぞれ計算してみればわかります。これらの計算式は問題文で与えられることもありますが、本問では提示されていないため、以下の計算式を覚えておくことが求められます。

  • NLIM、PLIM:窒素、りんの制限 [d-1]
  • N、P:窒素、りんの濃度
  • KN、KP:半飽和定数

ここで、問題文より窒素濃度は半飽和定数に等しく、りんの濃度は半飽和定数の2倍とのことなので、(2)式と(3)式を使うと、NLIMとPLIMはそれぞれ次の(4)式、(5)式のように計算することができます。

(4)式、(5)式より、より小さいNLIMの値が今回の栄養塩制限項となります。

よって、この結果と問題文で与えられた各種の数値を(1)式に代入して計算することで、比増殖速度Gを求めることができます。

以上から、正解は(2)となります。

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