R5年 大気有害物質特論 問6 問題と解説

 問 題     

塩化水素の吸収に関する記述中、ア~ウの(  )の中に挿入すべき語句の組合せとして、正しいものはどれか。

塩化水素の水に対する溶解度は大きく、かつ水との反応速度も大きいので、塩化水素の水による吸収は完全に( ア )である。ガス中の塩化水素濃度が高いときは、吸収装置としては( イ )が用いられ、ガス中の塩化水素濃度が低いときは( ウ )が用いられる。

  •     ア       イ     ウ
  1. 液側境膜抵抗支配   ぬれ壁塔  気泡塔
  2. 液側境膜抵抗支配   漏れ棚塔  気泡塔
  3. 液側境膜抵抗支配   ぬれ壁塔  充塡塔
  4. ガス側境膜抵抗支配  漏れ棚塔  充塡塔
  5. ガス側境膜抵抗支配  ぬれ壁塔  充塡塔

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

( ア )に関して、気体が液体に充分に溶けやすい(溶解度が大きい)とき、液体側はいくらでも気体を受け入れられる状態にあるため、気体の液体への吸収速度は気体側に依存することになります。つまり、この場合はガス側境膜抵抗が吸収速度を支配します。

一方、液体に溶けにくい(溶解度が小さい)ような気体を溶かす際は、液体側に現状溶け込んでいる濃度が問題となってくるため、その吸収速度は液体側に依存します。つまり、この場合は液側境膜抵抗が吸収速度を支配します。

今回の塩化水素は水にとても溶けやすいので、ガス側境膜抵抗が吸収速度を支配します。よって、( ア )には「ガス側境膜抵抗支配」が入ります。

( イ )には結論からいえば「ぬれ壁塔」が入りますが、塩化水素濃度が高いときにはぬれ壁塔が用いられる…というような覚え方はしなくてよいと思います。むしろ、ここではぬれ壁塔の特徴をしっかり覚えているかどうかがポイントになってきます。

ぬれ壁塔はガスの冷却が容易なので、大きな発熱を伴うガス吸収に有効であるというのが特徴的です。よって、溶解熱の大きい塩化水素が多く含まれているような場合には、ぬれ壁塔を用いるのが適当です。

( ウ )では塩化水素の濃度が低く溶解熱が問題にならないので、構造が簡単で広く使用されている充塡塔を採用するケースが多いです。よって、( ウ )には「充塡塔」が入ります。

以上のように考えれば正解が(5)だと決まりますが、( イ )と( ウ )については別の考え方で解くこともできます。

まず、ガス吸収装置にはガス分散形と液分散形があります。そして、塩化水素のように水に溶けやすい場合は( ア )のところで解説した通りガス側の抵抗支配となるので、液分散形の装置を選ぶ必要があります。

よって、( イ )にしても( ウ )にしても液分散形の装置が入るはずですが、選択肢にある「漏れ棚塔」や「気泡塔」はガス分散形なので不適です。このように考えれば、( イ )と( ウ )にはそれぞれ「ぬれ壁塔」と「充塡塔」が入ることがわかります。

ここで、以下にガス分散形と液分散形の代表例を挙げておきます。これは重要事項として押さえておくべき知識です。

【ガス分散形】

  • 段塔
  • 気泡塔
  • ジェットスクラバー
  • 漏れ棚塔

【液分散形】

  • 充塡塔
  • 流動層スクラバー
  • サイクロンスクラバー
  • ベンチュリスクラバー
  • スプレー塔
  • ぬれ壁塔
  • 十字流接触装置

以上から、( ア )は「ガス側境膜抵抗支配」、( イ )は「ぬれ壁塔」、( ウ )は「充塡塔」となるので、正解は(5)です。

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