R5年 大気特論 問13 問題と解説

 問 題     

排ガス中の硫黄酸化物の分析を行った。JISによる排ガス試料採取の方法として、誤っているものはどれか。

  1. 集じん装置の下流のダクトに、断面積が一定で、安全が確保できる水平部分と鉛直部分があったが、このうち水平部分に測定断面を設定した。
  2. 煙道の採取位置断面内複数の採取点で行った予備測定で、分析対象ガスの濃度の採取点による差異が、平均値から±12%だったので、実際の測定では試料ガスの採取点は煙道の壁に近い1点だけとした。
  3. ダスト濃度測定用の大口径採取口しかなかったので、フランジを加工して同じ採取口に、化学分析用の試料採取管を設置できるようにした。
  4. 採取管及び導管を200℃に常時加熱した。
  5. 吸収瓶法による化学分析の際、吸引ポンプの吸引力が弱かったので、吸収瓶を2個並列に連結し、吸引ポンプの負荷を下げ、必要な流量を確保した。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)は正しいです。試料ガスの採取位置は、ダクトの屈曲部分や断面形状が急激に変化する部分を避けなければいけません。断面積が一定で、安全が確保できる部分であれば、水平or鉛直は問いません。

(2)も正しいです。本来なら採取点は測定断面の形状や大きさに応じて複数設けるのが普通です。しかし、分析対象ガスの濃度の採取点による差異が平均値から±15%以下であれば、任意の一点のみを採取点とすることができます。

(3)も正しいです。化学分析用の採取口に比べて、ダスト濃度測定用の採取口は径が大きいです。このままでは、ダスト濃度測定用の大口径採取口を化学分析に用いることはできません。しかし、フランジを加工してきちんと採取できるようにすれば、これを使用することが認められています。

(4)も正しいです。排ガス試料を採取する際には、試料ガス中の水分や露点の高いガス成分が採取管や導管中で凝縮したり、凝縮水が導管中で凍結したりすることを避けるため、保温または加熱が必要となります。

特に、分析対象が硫黄酸化物のときは、その酸露点を考慮して200℃程度に常時加熱することが求められます。

(5)が誤りです。吸収瓶は2個直列に連結しますが、これは1つ目で捕集しきれなかった硫黄酸化物を、2つ目で確実に捕集するためです。並列に並べてしまうと、各々の吸収瓶を通過した硫黄酸化物がそのまま抜けてしまうので、測定結果に負の誤差が生じることとなり、不適です。

以上から、正解は(5)となります。

コメント

  1. 匿名 より:

    (4)ですが、設問の設定では凝縮するのは水蒸気だけです。加熱の目的は、二酸化硫黄は水に溶解しやすいので、水分と共存させないためではないでしょうか?ガスの溶解と凝縮は別の現象です。

    • (管理人) より:

      ご意見ありがとうございます。
      JISの記載を再確認したところ、「採取管及び導管の保温又は加熱は,試料ガス中の水分及び露点の高いガス成分が採取管,導管中で凝縮,又は凝縮水が導管中で凍結することを避けるために行う。」と書かれていました。
      ご指摘いただいた溶解の件も、酸露点という表現で解説に追記しました。