問 題
吸引ノズルによる排ガス中のダスト採取に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 吸引速度がダクト内の排ガス流速よりも大きいと、測定濃度は真のダスト濃度よりも大きくなる。
- 非等速吸引によるダスト濃度の誤差を推定する式として、デービスの式がある。
- 測定点における排ガスの流れ方向と吸引ノズルの方向に偏りがあると、吸引速度を排ガス流速に一致させても、測定濃度は真のダスト濃度よりも小さくなる。
- JISでは、吸引ノズルから吸引するガスの流速は、測定点における排ガスの流速に対して相対誤差-5~+10%の範囲内とすると規定されている。
- 等速吸引を行う方法として、普通形試料採取装置を用いる方法と、平衡形試料採取装置を用いる方法がある。
解 説
(1)について、吸引速度が大きい場合、吸引ノズルの周りにある排ガスも引っ張られるため、吸引するガス量は増えます。一方、同じく周囲にあるダストは、ある程度の重みを持っているため、吸引により軌道を曲げられることなく直進します。この性質のことを慣性といいます。
もちろん、軽いダストは排ガスと一緒に引っ張られてしまいますが、余計に吸った排ガスの分のすべてのダストを吸引できるわけではないので、全体としては実際の濃度よりも小さく計測されます。
よって、(1)の「測定濃度は真のダスト濃度よりも大きくなる」が誤りで、実際には小さくなります。
(2)~(5)については全て正しい記述ですが、それぞれ重要事項を含んでいますので、簡単に確認していきます。
(2)について、非等速吸引によるダスト濃度の計測誤差は、デービスの式から求められます(あくまで推定式ですが)。デービスの式は以下の通りです。この式を使った出題もたまに見られるので(H30年 問13参照)、余裕があれば覚えておきたい公式です。
- Cn:ダスト濃度(非等速吸引)
- C:ダスト濃度(等速吸引)
- v:測定点のガス流速
- vn:吸引ノズルのガス流速
- Stk:ストークス数
(3)については、下図を見ながら以下の解説文を確認してください。
排ガスの流れ方向と吸引ノズルの方向に偏りがない場合、上図左側のように吸引ノズルに排ガスとダストがまっすぐ入ってきます。一方で、偏りがある場合を図示したのが上図中央です。
ここで、傾きがあると排ガスをまっすぐ受け止める面積が減ります。そのことを表したのが上図右側です。排ガスが縦方向に流れるとすると、赤色のノズルのほうが排ガスを受ける幅が青色のノズルよりも狭くなってしまいます。
傾きがある場合でも、排ガスは軽いので吸引によってノズルに引っ張られます。しかし、一部の重いダストは吸引されきらずに吸引ノズルをスルーしてしまいます。ガスは吸引できる一方でダストが吸引できないので、測定濃度は真のダスト濃度よりも小さくなります。
(4)について、「相対誤差-5~+10%の範囲内」というのは押さえておきたい知識です。理由はともかく知識として押さえておけば得点することができますが、根拠を知って納得したほうが覚えやすいという方は、H28年 問13の解説を参照してください。
(5)について、等速吸引を行う方法には、普通形試料採取装置を用いる方法と平衡形試料採取装置を用いる方法があります。平衡形試料採取装置の特徴として、これを用いる場合は、あらかじめ水分量や等速吸引流量を知る必要がありません。
以上から、正解は(1)となります。
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