問 題
広域・地球規模の環境問題における大気汚染物質に関する記述として、誤っているものはどれか。
- 光化学オキシダントの主成分であるオゾンは、窒素酸化物と、炭化水素を含む揮発性有機化合物が関与する大気中での化学反応により生成する。
- 浮遊粒子状物質及び微小粒子状物質には、硫酸イオン、硝酸イオン、有機炭素化合物、アンモニウムイオン等を化学成分として含むものがある。
- 大気中で二酸化硫黄から硫酸が生成するメカニズムとして、気相でのOHとの反応、雲や霧の中での反応、粒子状物質上での反応などがある。
- ハイドロクロロフルオロカーボンであるHCFC-22の大気中寿命は、クロロフルオロカーボンであるCFC-11の大気中寿命より長い。
- 2019年における地上でのメタンの世界平均大気中濃度は、一酸化二窒素より高い。
解 説
本問は過去の出題傾向とは異なった趣きで、やや難易度の高い出題といえます。悪問・奇問というわけではないので、余裕があれば押さえておきたい知識ですが、ご自身の学習状況や理解度によっては後回しにしても構わないと思います。
(1)は正しいです。光化学オキシダントの主成分であるオゾンは、窒素酸化物と非メタン炭化水素を含む揮発性有機化合物などが関わる大気中の光化学反応で生成します。この反応は複雑なので、その内容まで押さえる必要はありません。
(2)も正しいです。浮遊粒子状物質や微小粒子状物質は大きさだけが基準になるため、その発生源由来は関係ありません。工場や車などの人為的発生源由来のほか、火山の噴火や黄砂の飛来などの自然発生源が由来となることもあります。
そのため、その化学成分も様々です。(2)に書かれているように、硫酸イオン、硝酸イオン、有機炭素化合物、アンモニウムイオンなどを含むものもあります。
(3)も正しく、これは酸性雨に関する記述となっています。酸性雨の主要な原因物質は硫酸と硝酸で、ここでは硫酸のことが書かれていますが、硝酸についても同様で、気相でのOHとの反応、雲や霧の中での反応、粒子状物質上での反応によって生成します。
(4)が誤りです。主要な温室効果ガスの大気中寿命は次の通りとなります。(IPCC 2021より)
- 六フッ化硫黄:1000年
- HFC-23 :228年
- 一酸化二窒素:109年
- CFC-11 :52年
- HCFC-22 :12年
- メタン :12年
- 二酸化炭素 :なし (一定ではなく変動する)
よって、HCFC-22とCFC-11の大気中寿命を比べると、HCFC-22のほうが短いことがわかります。これらの数値を正確に覚える必要はありませんが、長短関係を問う問題がたまに出題されるので、余裕があれば覚えておきたい知識です。
(5)は正しいです。温室効果ガスの中で大気中の濃度が最も高いのはもちろん二酸化炭素ですが、それに次ぐのがメタンです。湿地や水田、家畜(牛のげっぷなど)、埋立地、化石燃料の採掘や燃焼などがメタンの発生源となります。
以上から、正解は(4)です。
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