R3年 水質有害物質特論 問2 問題と解説

 問 題     

重金属排水を凝集沈殿処理するために使用されるアルカリ剤の中和特性や使用上の注意事項に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. カセイソーダは液状で使用するため、中和速度が速く、pH調整が容易である。
  2. 消石灰はカセイソーダに比べ高価であるため、小規模な排水処理で使用される場合が多い。
  3. 水酸化マグネシウムは乳液で使用するため、薬品貯留や薬液配管での沈殿防止対策が必要である。
  4. 石灰石の使用例として、濃厚ふっ酸廃液の処理がある。
  5. ソーダ灰は、中性から弱アルカリ域での処理に有効である。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)のカセイソーダは水酸化ナトリウム(NaOH)のことです。水に溶けやすく強アルカリ性を示すので、記述の通り容易にpH調整を行うことができます。よって、これは正しい文章です。

(2)の消石灰は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)のことで、固体(粉末)です。石灰石(CaCO3)を熱して生石灰(CaO)とし、これを水と反応させることで消石灰(Ca(OH)2)が作られます。原料も製造工程も比較的安価であるのが特徴です。

一方、カセイソーダは食塩を電気分解にして作られます(電解法)。これは、結構な電気エネルギーを消費するため、消石灰と比較すると高価です。

よって、消石灰はカセイソーダに比べ安価であるため、大規模な排水処理で使用される場合が多く、(2)の文章が誤りとなります。

(3)は記述の通りです。カセイソーダは水に溶けて液状になるので貯槽や配管に留まる心配があまりありませんが、水酸化マグネシウムは乳液として使うので、配管の途中などで沈殿しやすいため注意が必要です。

ちなみに、消石灰も水酸化マグネシウムと同じく乳液として使うため、同様の問題が生じます。

(4)も正しい文章です。ふっ酸とはふっ化水素(HF)の水溶液のことですが、これに石灰石(CaCO3)を反応させると以下に示す化学反応が起こり、ふっ化カルシウム(CaF2)の結晶として回収できます。

(5)のソーダ灰は炭酸ナトリウム(Na2CO3)のことです。重金属類の炭酸塩は水に溶けにくいものが多いので、中性~弱アルカリ域でソーダ灰と汚水中の重金属類が反応すると、難溶性の塩となって沈殿します。よって、(5)も正しいです。

以上から、正解は(2)となります。

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