R3年 汚水処理特論 問6 問題と解説

 問 題     

活性炭吸着に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 活性炭の吸着速度は、活性炭表面積の2乗に比例する。
  2. 活性炭には疎水性の強い物質ほど吸着されやすい。
  3. 活性炭での吸着等温線がフロイントリッヒの式X=kCn(X:単位質量当たりの吸着量、C:平衡濃度、k、n:定数)に従うとき、kが大きくnが小さいほうが低濃度から高濃度にわたってよく吸着する。
  4. 活性炭の使用量を節減し、処理水の濃度を低くするには向流多段吸着が用いられる。
  5. 活性炭の吸着速度は、活性炭近傍の液境膜の総括物質移動係数が大きいほど大きくなる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

(1)の「2乗に比例」が誤りであり、ここは「比例」とするのが正しいです。これを知識として覚えておければ何よりですが、(2)~(5)のほうが重要または基本的な内容なので、この問題は消去法で解いてもよいと思います。

(2)で、活性炭はそれ自身、極性の小さなものです。吸着はファンデルワールス力によるもののため、極性物質(水など)よりも非極性物質(炭化水素など)との相性が良くなります。

よって、親水性が強い物質ほど吸着されにくく、疎水性が強い物質ほど吸着されやすいので、(2)は正しいです。

(3)は知識問題ではなく、考える問題です。kが小さいと吸着量Xも小さくなってしまうので、kはなるべく大きいほうが望ましいです。

また、nは乗数なので、もしnが大きい数値だとしたら、Cの値が少し変わるだけでCnの値が大きく変わり、それに応じて吸着量Xも激しく上下します。これだと低濃度から高濃度にわたってよく吸着するとはいえず、nは小さくほうがCnの値が安定することがわかります。

よって、kが大きいと吸着量が上がり、nが小さいと濃度の変動に強くなるので、(3)は正しいと判断できます。

(4)で、向流多段吸着だと、活性炭と汚水が同じ方向に流れる場合と比べて接触機会が増えるため、活性炭の量も少なくて済みます。

また、この方法を取ることにより、汚水の下流が活性炭の上流ということになるため、ある程度吸着処理されたあとの汚水を未使用の活性炭で吸着させ、まだ全然処理されていない汚水をやや汚れている活性炭で吸着させることができます。

このように、向流多段吸着は有利な吸着方法といえるので、(4)は正しいです。

(5)で、活性炭と液体との境界にある膜の物質移動係数が高いというのは、汚染物質が汚水側から活性炭側に移りやすいということです。

つまり、それだけ効率的に吸着できることになるので、物質移動係数が大きいと活性炭の吸着速度も大きくなります。よって、(5)も正しいです。

以上から、(1)が正解となります。

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