問 題
変圧器の一次側(巻数N1)の諸量を二次側(巻数N2)に換算した場合の簡易等価回路の換算係数に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、この変圧器の巻数比(N1/N2)をaとする。
- 一次側の電圧は1/a倍
- 一次側の電流はa倍
- 励磁電流はa倍
- 一次側のインピーダンスは1/a2倍
- 励磁アドミタンスは1/a2倍
解 説
単相変圧器の一次側の諸量を二次側に換算した簡易等価回路は以下のように描くことができます。
この手の問題はたびたび出題されているので、問題文に図がなくても描けるようにしておく必要があります。この作業に慣れていない方は、変圧器の等価回路のページやH26年 問7の解説を確認しておいてください。
ちなみに、出題頻度からいえば今回のような「一次側の諸量を二次側に換算」よりも、「二次側の諸量を一次側に換算」のほうが頻出です。そのため、後者のパターンを覚えておいて、前者のときはその反対だと考えてもよいと思います。
【一次側の諸量を二次側に換算した等価回路】
- V1、V2:一次電圧、二次電圧 [V]
- E1、E2:一次側、二次側の誘導起電力 [V]
- I1、I2:一次電流、二次電流 [A]
- r1、r2:一次巻線、二次巻線の抵抗 [Ω]
- x1、x2:一次巻線、二次巻線の漏れリアクタンス [Ω]
- Z1、Z2:一次巻線、二次巻線のインピーダンス [Ω]
- ZL:負荷インピーダンス [Ω]
- α:巻数比 (N1/N2)
上図より、一次側の電圧は1/a倍、電圧はa倍、インピーダンスは1/a2倍となるので、選択肢(1)、(2)、(4)はいずれも正しいことがわかります。
ところで、変圧器の問題が出題されるときには、高い確率で励磁回路を無視できる旨の条件が付きます。そのため、上図には励磁回路が含めていませんし、もし選択肢(1)、(2)、(4)のいずれかが正解であれば、励磁を扱う選択肢(3)や(5)を考えなくて済みました。
しかし、今回は選択肢(3)か(5)が正解になるので、励磁回路についても考えなくてはいけません。励磁回路を考慮すると、等価回路は下図のように描くことができます。
上図を見るとわかるように、励磁電流は一次側の電流と同様に考えることができるので、励磁電流を二次側に換算するとa倍となります。よって、選択肢(3)も正しいといえます。
すると、残るは(5)の励磁アドミタンスだけなので、以下ではこれについて考えていきます。
上記までで見てきたように、励磁回路を流れる電流I0は換算前のa倍、電圧Vは換算前1/a倍です。よって、オームの法則より、励磁インピーダンスZ0は換算によって次のように表すことができます。なお、I0、V、Z0は換算前、I0‘、V’、Z0‘は換算後のパラメータとします。
以上から、励磁インピーダンスZ0は換算によって1/a2倍となることがわかります。そして、アドミタンスYはインピーダンスZの逆数(Y=1/Z)なので、励磁アドミタンスY0は換算によってa2倍となります。
結論として、選択肢(5)の「励磁アドミタンスは1/a2倍」が誤りで、正しくは「励磁アドミタンスはa2倍」となることがわかります。
以上から、正解は(5)です。
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