電験三種 R5年度下期 機械 問4 問題と解説

 問 題     

あるかご形三相誘導電動機を定格電圧でY-Δ始動したところ、始動トルクは60N・mであった。また、Δ結線での全電圧始動時(定格電圧)の始動トルクは定格運転時の240%である。

この電動機の定格運転時のトルクの値[N・m]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 20
  2. 25
  3. 35
  4. 43
  5. 75

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

問題文によると、最初は三相誘導電動機を定格電圧でY結線にて始動させ、続いてΔ結線に切り替え、その後Δ結線のまま定格運転を行っています。ここで、説明の都合上、各パラメータを以下のように設定します。

  • TY始:Y結線での始動トルク=60[N・m]
  • TΔ始:Δ結線での始動トルク [N・m]
  • TΔ定:Δ結線での定格運転時のトルク [N・m]
  • VY:Y結線での定格電圧 [V]
  • VΔ:Δ結線での定格電圧 [V]

まず、重要事項として、トルクは電圧の2乗に比例します。これはそのまま知識として押さえておいてもよいですが、トルクTと二次入力P2との関係式から考えることもできます。

  • P2:二次入力 [W]
  • ω:角速度 [rad/s]
  • T:トルク [N・m]
  • V:電源電圧 [V]
  • Z:インピーダンス [Ω]
  • Ns:同期速度 [min-1]

上式の矢印左側は、最重要公式として押さえてください。矢印右側は、二次入力と角速度をそれぞれ変形したものですが、ZやNsは一定なので、TはVの2乗に比例することがわかります(Nsは磁極の数と周波数から決まる値なので、今回はこれらに変更がないため、一定となります)。

よって、次の(2)式が成り立ちます。

話は変わりますが、Δ結線では、各相の相電圧は線間電圧と同じ値となります。一方でY結線では、各相の相電圧は線間電圧の1/√3倍の値となります。つまり、VYVΔは次の(3)式のような関係となります。

以上から、TY始とTΔ始の関係は次の(4)式で表すことができます。

ここで、(4)式に(3)式を代入すると、次の(5)式のようになります。

一方で、問題文よりTΔ始TΔ定の240%ということなので、問われているTΔ定は、(5)式を使って次のように求めることができます。

以上から、正解は(5)となります。

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