電験三種 R5年度下期 電力 問14 問題と解説

 問 題     

電線の導体に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 地中ケーブルの銅導体には、伸びや可とう性に優れる軟銅線が用いられる。
  2. 電線の導電材料としての金属には、資源量の多さや導電率の高さが求められる。
  3. 鋼心アルミより線は、鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせたもので、軽量で大きな外径や高い引張強度を得ることができる。
  4. 電気用アルミニウムの導電率は銅よりも低いが、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線の方が銅線より軽い。
  5. 硬銅線は軟銅線と比較して曲げにくく、電線の導体として使われることはない。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)は正しいです。軟銅線は伸びや可とう性に優れているため、ケーブルの敷設やメンテナンスが容易になることから、地中ケーブルとしてよく用いられます。硬銅線だと軟銅線に比べて曲げにくいため、地中ケーブルの銅導体として使われることは少ないです。

(2)も正しいです。電線に使用される金属には次のような材料特性が求められます。

  • 資源量が多い
  • 導電率が大きい
  • 引張強さが大きい
  • 質量(比重)が小さい
  • 線熱膨張率が小さい

これらの条件を満たすものとして、銅やアルミニウムが一般的に使用されます。

(3)も正しいです。鋼心アルミより線は、中心に亜鉛めっき鋼より線を配置し、その周囲に硬アルミより線を配置した構造を有しています。

この構造は、必要な導体の電気抵抗に対して、アルミ導体を使用するほうが銅導体を使用するよりも断面積が大きくなるものの軽量にできる利点と、必要な引張強さを鋼心で補強して得ることができる利点を活用しています。

(4)も正しいです。純アルミニウムは、純銅と比較して導電率が2/3程度、比重が1/3程度です。

アルミニウムは導電率が低いので、銅を使う場合と同じ電気抵抗の電線にするためには、銅の3/2倍の量を使う必要があります。しかし、3/2倍もの量を使っても比重が1/3程度なので、その質量比は

と計算できます。つまり、電気抵抗と長さが同じ電線の場合、アルミニウム線は銅線の半分くらいの軽さであることがわかります。

(5)の前半部分は正しい記述ですが、後半部分が誤っています。

銅は、導電率が高く、加工性や強度の面で優秀であるため、送電線路の導体としてよく用いられます。この銅はさらに「硬銅」と「軟銅」に分けられます。

硬銅線は常温で銅を線引き加工したもので、導電率がやや低め(抵抗率が高め)になります。この硬銅線を400℃前後の高熱で焼きなますと軟銅線をなり、文字通り軟らかくなります。軟銅線のほうが導電率は高いです。

硬銅線と軟銅線はどちらが優れているということはなく、銅線を使う場所や機器の特徴・条件などを加味して選択します。

たとえば架空送電線として使う場合、風雨を考慮して耐食性の優れる硬銅を使います。一方で、地中ケーブルとして使う場合、地中の環境変化は小さいため、伸びや可とう性に優れる上に導電率が高い軟銅を使うほうがメリットが大きいです。

  • 硬銅:引張強さや耐食性に優れるが、導電率が少し低い(軟銅比で97%)。架空送電線の銅導体として用いられる。
  • 軟銅:引張強さは小さいが、伸びや可とう性に優れ、導電率が高い。地中ケーブルの銅導体として用いられる。

以上から、正解は(5)となります。

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