電験三種 R4年度上期 機械 問9 問題と解説

 問 題     

いろいろな変圧器に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 単巻変圧器は、一つの巻線の一部から端子が出ており、巻線の共通部分を分路巻線、共通でない部分を直列巻線という。三相結線にして電力系統の電圧変成などに用いられる。
  2. 単相変圧器3台をΔ‒Δ結線として三相給電しているとき、故障等により1台を取り除いて残りの2台で同じ電圧のまま給電する方式をV結線方式という。V結線にすると変圧器の利用率はおよそ0.866倍に減少する。
  3. スコット結線変圧器は、M変圧器、T変圧器と呼ばれる単相変圧器2台を用いる。M変圧器の中央タップに片端子を接続したT変圧器の途中の端子とM変圧器の両端の端子を三相電源の一次側入力端子とする。二次側端子からは位相差180度の二つの単相電源が得られる。この変圧器は、電気鉄道の給電などに用いられる。
  4. 計器用変成器は、送配電系統等の高電圧・大電流を低電圧・小電流に変成して指示計器にて計測するためなどに用いられる。このうち、計器用変圧器は、変圧比が1より大きく、定格二次電圧は一般に、110V又は110/√3Vに統一されている。
  5. 計器用変成器のうち、変流器は、一次巻線の巻数が少なく、1本の導体を鉄心に貫通させた貫通形と呼ばれるものがある。二次側を開放したままで一次電流を流すと一次電流が全て励磁電流となり、二次端子には高電圧が発生するので、電流計を接続するなど短絡状態で使用する必要がある。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)は正しいです。単巻変圧器の回路図は以下のように表され、巻線の共通部分を分路巻線、共通でない部分を直列巻線といいます。

(2)も正しいです。単相変圧器3台のΔ‒Δ結線から1台取り除くとV‐V結線となります。ここで、Δ結線の出力PΔとV結線の出力PVは以下の通りです。

  • PΔ:Δ結線の出力[V・A]
  • PV:V結線の出力[V・A]
  • P:変圧器1台分の容量[V・A]

よって、V結線の場合、変圧器2台分の容量は2Pで、そのうち√3Pを出力として取り出せるので、その利用率は次のように計算できます。

(3)が誤りです。スコット結線変圧器は、三相3線式の電源を直交する二つの単相(二相)に変換し、大容量の単相負荷に電力を供給する場合に用られるものです。

「直交する二つの単相(二相)」に変換して出力するのが最大の特徴ですが、(3)の記述には「位相差180度の二つの単相電源が得られる」と書かれているので、この部分が誤りです。「180度」を「90度」に直せば正しい文章となります。

(4)は正しいです。計器用変成器には、計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)と変流器(CT:Current Transformer)があります。

高電圧または大電流をそのまま測定するのは難しいので、計器用変成器を使うことで小さな値に変換することで、普通の電圧計または電流計で測定できるようにします。

このうち、計器用変圧器の定格二次電圧は、110[V]または110/√3[V]に統一されています。一方、変流器の二次側の定格電流は、一般的に5[A]となっています。

(5)も正しいです。記述の通り、変流器を扱う際には、一次側に電流が流れているのに二次側の回路を開放してはいけません。一次側は大きな電流が流れているため、二次側を開放すると、その電流の行き場がなくなり、二次側の誘起電圧が急激に上昇してしまいます。

以上から、正解は(3)となります。

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