電験三種 R4年度上期 機械 問7 問題と解説

 問 題     

電源電圧一定の下、トルク一定の負荷を負って回転している各種電動機の性質に関する記述として、正しいものと誤りのものの組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 巻線形誘導電動機の二次抵抗を大きくすると、滑りは増加する。
  2. 力率1.0で運転している同期電動機の界磁電流を小さくすると、電機子電流の位相は電源電圧に対し、進みとなる。
  3. 他励直流電動機の界磁電流を大きくすると、回転速度は上昇する。
  4. かご形誘導電動機の電源周波数を高くすると励磁電流は増加する。
  •  ア    イ    ウ    エ
  1. 誤り   誤り   正しい  正しい
  2. 正しい  正しい  誤り   誤り
  3. 誤り   正しい  正しい  正しい
  4. 正しい  誤り   誤り   正しい
  5. 正しい  誤り   誤り   誤り

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

アについて、巻線形誘導電動機では、一定のトルクを生じるための二次巻線抵抗r2と滑りsとの間には比例関係があり、このような特性を比例推移といいます。この特性は、巻線形誘導電動機の始動トルクの改善や速度制御に広く利用されています。

  • r2:二次巻線抵抗[Ω]
  • s:滑り
  • k:任意の倍数
  • const.:一定、という意味(コンスタントの略)

よって、二次抵抗を大きくすれば滑りも大きくなるので、アは正しいです。

イについて、同期電動機における重要な特性曲線は「V曲線」と呼ばれ、その軌跡は次のようになります。

V曲線は、電圧一定の電源に接続した出力一定の同期電動機に対する、界磁電流と電機子電流の関係を表しています。界磁電流を徐々に減少(または増加)させると、上図のように電機子電流は初めのうちは下がっていき、途中からは一転して上がります。

上図を見るとわかるように、イの文章にあるように界磁電流を小さくした場合、電機子電流の位相は電源電圧に対し「進み」ではなく「遅れ」となります。よって、イは誤りです。

ウについて、これは他励直流電動機の回転速度に関する文章なので、直流電動機で回転速度の式といえば、逆起電力の公式を思い出したいところです。これは重要公式として押さえておくべき公式です。

  • E:逆起電力(=電機子電圧) [V]
  • p:磁極数
  • Z:電機子総導体数
  • a:巻線の並列回路数
  • Φ:1極あたりの磁束 [Wb]
  • n:電機子の回転速度 [min-1]

上式より、界磁電流を大きくすると、磁束Φが大きくなるので、その分だけ回転速度は小さくなることが読み取れます。よって、ウの文章の「回転速度は上昇する」というのは誤りです。

エはやや難易度が高いですが、誘導電動機の誘導起電力の式は以下の通り表すことができます。

  • E:誘導電動機の誘導起電力 [V]
  • f:周波数 [Hz]
  • Φ:磁束 [Wb]
  • N:巻数

よって、電源周波数fを高くすると、磁束Φはそれに反比例して小さくなり、その分だけ励磁電流も小さくなります。よって、エの文章の「励磁電流は増加する」というのは誤りです。

以上から、アが正しく、イとウとエは誤りなので、正解は(5)となります。

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