電験三種 R4年度上期 電力 問6 問題と解説

 問 題     

電力系統の電圧調整に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 線路リアクタンスが大きい送電線路では、受電端において進相コンデンサを負荷に並列することで、受電端での進み無効電流を増加させ、受電端電圧を上げることができる。
  2. 送電線路において送電端電圧と受電端電圧が一定であるとすると、負荷の力率が変化すれば受電端電力が変化する。このため、負荷が変動しても力率を調整することによって受電端電圧を一定に保つことができる。
  3. 送電線路での有効電力の損失は電圧に反比例するため、電圧調整により電圧を高めに運用することが損失を減らすために有効である。
  4. 進相コンデンサは無効電力を段階的にしか調整できないが、静止型無効電力補償装置は無効電力の連続的な調整が可能である。
  5. 電力系統の電圧調整には調相設備と共に、発電機の励磁調整による電圧調整が有効である。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)は正しいです。線路リアクタンスX[Ω]が大きいとき(=遅れ力率)は、負荷と並列に進相コンデンサを接続することで進み無効電流を増加させ、力率を上げることができます。その結果、電圧降下が小さくなるので、受電端電圧が上がります。

(2)も正しいです。まず、三相3線式のうち1相と中性線とを結んだ等価回路を以下に示します。

  • Es:送電端電圧 [V]
  • Er:受電端電圧 [V]
  • I:線電流 [A]
  • R:抵抗(電線1条あたり) [Ω]
  • X:リアクタンス(電線1条あたり) [Ω]
  • cosθ:力率

上図より、受電端電力P[W]は次のように表すことができます。

よって、負荷の力率θが変化すれば受電端電力Pも変化し、Pの変動に応じてθを調整することによってErを一定に保つことができることがわかります。

(3)について、三相3線式の電線路での線路損失の式は次に示す通りです。これは重要公式として押さえておくべきですが、考え方としては、1線式回路での消費電力に対して3線式の分として3倍にしただけです。

しかし今回は損失と電圧の関係を知りたいので、(1)式を使って(2)式を次に示す(3)式のように書き換えます。

よって、損失Pは電圧Erの「2乗に反比例」するため、(3)の記述が誤りであることがわかります。

なお、(3)式より、後半部分の「電圧調整により電圧を高めに運用することが損失を減らすために有効である。」は正しい記述であると判断できます。

(4)は正しいです。進相コンデンサは、重負荷により受電端の電圧が低下した際に、進み無効電力を与えることで電圧を上昇させるために使われます。これの調整は段階的にしかできません。一方、静止型無効電力補償装置は高速で連続的に無効電力を調整できる、最新型の調相設備です。

(5)も正しいです。調相設備は受電端において負荷変動が起こった際に、うまく進みor遅れ無効電力を与えて送電端と受電端の電圧を一定値に保つ役割を果たします。それとは別に、発電機の励磁調整によっても電圧調整を行うというアプローチもあります。

以上から、正解は(3)です。

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