電験三種 R3年 機械 問18 問題と解説

 問 題     

情報の一時的な記憶回路として用いられるフリップフロップ(FF)回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) FF回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、(1)~(4)における出力とは、反転しないQのことである。

  1. RS-FFにおいては、クロックパルスの動作タイミングで入力RとSがそれぞれ1と0の場合に0を、入力RとSがそれぞれ0と1の場合に1を出力する。入力RとSを共に1とすることは禁止されている。
  2. JK-FFにおいては、クロックパルスの動作タイミングで入力JとKがそれぞれ1と0の場合に1を、入力JとKがそれぞれ0と1の場合に0を出力し、入力JとKが共に1の場合には出力を保持する。
  3. T-FFは、クロックパルスの動作タイミングにおいて、出力を反転する。
  4. D-FFは、クロックパルスの動作タイミングにおいて、入力Dと一致した出力を行う。
  5. FFの用途として、カウンタ回路やレジスタ回路などがある。

(b) クロックパルスの立ち下がりで動作する二つのT-FFを用いた図の回路を考える。この回路において、クロックパルスCに対する回路の出力Q1、及びQ2、のタイムチャートとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 

 

 

 

 

正解 (a)-(2), (b)-(5)

 解 説    

(a)

フリップフロップ(FF)回路でよく出題されるのはJK-FFですが、この問題ではRS-FFやT-FF、D-FFといった電験三種試験ではあまり見慣れないFFが多数登場します。

しかし、答えを先に示すとJK-FFのことが書かれた(2)の記述が誤りであり、JK-FFの内容をしっかり理解していれば設問(a)は正解することができるようになっています。

(1)で、RS-FFはR(リセット)とS(セット)で構成されるフリップフロップで、入力と出力の関係は下図のようになります。

要するに、RSともに0だと何も起こらず、Rだけ1ならリセットにより出力は0、Sだけ1ならセットにより出力は1となります。RもSも1だとセットしていいのかリセットしていいのかわからなくなるので、両方1とするのは禁止されています。

よって、(1)は正しいです。

(2)で、JK-FFの入力と出力の関係は下図のようになります。

冒頭でも解説した通り、JK-FFは頻出なので、上表はしっかり覚えておきたい知識です。より詳しく知りたい方は、JK-フリップフロップ(JK-FF)のページを参照してください。

よって、(2)の最後の部分「入力JとKが共に1の場合には出力を保持する」が誤っていて、この場合は出力が反転します。

(3)で、T-FFのTはToggle(反転)のことで、入力と出力の関係は下図のようになります。

名前からもわかりやすいですが、T(反転)が0なら反転しないので、出力は入力が保持されます。一方、T(反転)が1なら出力は入力が反転したものとなります。

よって、(3)は正しいです。

(4)で、D-FFのDはDelay(遅延)のことで、入力と出力の関係は下図のようになります。

こちらも名前から考えやすいですが、Dは遅延を生むだけであり、出力の0や1には影響が出ません。遅延というのは、Dが0から1に変わった際、少し遅れて出力が0から1に切り替わるということです。

よって、入力Dが0なら出力も0、入力Dが1なら出力も1なので、(4)は正しいです。

(5)で、FFを複数並べれば数値の演算ができるので、カウンタ回路として成立します。また、FFは(1)~(4)の解説の通り数値を保持することもできるので、レジスタ(記録)回路としても使えます。

よって、(5)は正しいです。

以上から、正解は(2)となります。

(b)

設問(a)の(3)で解説した通り、T-FFはT(反転)が0なら出力は反転せずに保持され、T(反転)が1なら出力は反転します。

ただし、今回注意したいのは、問題の図のT-FFの入力端子に白丸(○)が付いていることです。問題文にも「クロックパルスの立ち下がりで動作する二つのT-FF」と書かれている通り、白丸(○)がある場合、クロックパルスCが0になった瞬間が動作タイミングです。

ちなみに、もし白丸(○)がない場合には、クロックパルスCが1になった瞬間が動作タイミングとなります。

今回の場合、2つのT-FFのうち左側のT-FFに関しては、クロックパルスCのタイムチャートで「↓」となっている瞬間が上表の「入力T=1」に該当します。つまり、この「↓」のたびに出力Q1が反転することになります。

よって、この時点で選択肢は(4)と(5)に絞られます。

続いて、右側のT-FFでも入力端子に白丸(○)が付いています。右側のT-FFの入力はQ1なので、今度はQ1が立ち下がった瞬間に出力Q2が反転することになります。

よって、その動作を表しているのは、(4)と(5)のうち、(5)のほうだとわかります。

以上から、正解は(5)となります。

コメント