電験三種 R3年 機械 問3 問題と解説

 問 題     

一定電圧、一定周波数の電源で運転される三相誘導電動機の特性に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. かご形誘導電動機では、回転子の導体に用いる棒の材料を銅から銅合金に変更すれば、等価回路の二次抵抗の値が増大するので、定格負荷時の効率が低下する。
  2. 巻線形誘導電動機では、トルクの比例推移により、二次抵抗の値を大きくすると、最大トルク(停動トルク)を発生する滑りが小さくなり、始動特性が良くなる。
  3. 巻線形誘導電動機では、外部の可変抵抗器で二次抵抗値を変化させ、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。
  4. 二重かご形誘導電動機では、始動時に回転子スロット入口に近い断面積が小さい高抵抗の導体に、定格負荷時には回転子内部の断面積が大きい低抵抗の導体に主要な二次電流を流し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。
  5. 深溝かご形誘導電動機では、幅が狭い平たい二次導体の表皮効果による抵抗値の変化を利用し、大きな始動トルクと定格負荷時高効率の両方を実現することができる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)は正しいです。純粋な銅は導電率が高いので、銅から銅合金に変えると抵抗の値が増大し、効率は低下します。とはいえ、銅合金を用いることで導体の加工性や機械的強度、耐食性を向上させることができるので、銅合金を使うメリットも多いです。

(2)に関して、巻線形誘導電動機のトルクは、二次回路の巻線抵抗r2と滑りsの比に関係するので、二次回路の巻線抵抗r2がk倍になると、k倍になる前のトルクと同じ大きさのトルクを得るための滑りsも、前の滑りのk倍となります。

このように、一定のトルクを生じるための二次巻線抵抗r2と滑りsとの間には比例関係があり、このような特性を比例推移といいます。この特性は、巻線形誘導電動機の始動トルクの改善や速度制御に広く利用されています。

  • r2:二次巻線抵抗[Ω]
  • s:滑り
  • k:任意の倍数
  • const.:一定、という意味(コンスタントの略)

よって、二次抵抗を大きくすれば滑りも大きくなるので、(2)の「二次抵抗の値を大きくすると~滑りが小さくなり」という部分が誤りです。

(3)は正しいです。(2)で解説したトルクの比例推移を使えば、二次抵抗の値を上げ下げすることでトルクの値を変えることができます。

始動時には二次抵抗の値を大きくすることで始動トルクも大きくし、大きなトルクが必要ない定格運転時には、二次抵抗の値を小さくすることで銅損を減らして高効率化するといった運転が可能です。

(4)は正しいです。二重かご形誘導電動機は回転子に内外二重のスロットを設け、それぞれに導体を埋め込んだものです。

内側(回転子中心側)の導体は外側(回転子表面側)の導体に比べて抵抗値を大きくしているため、始動時には電流が外側導体に偏り、大きな始動トルクが得られます。

(5)は正しいです。深溝かご形誘導電動機は、回転子の深いスロットに幅の狭い平たい導体を押し込んで作られます。

このような構造とすることで、回転子導体の電流密度は定常時に比べて始動時は導体の外側(回転子表面側)と内側(回転子中心側)で不均一の度合いが増加し、等価的に二次導体のインピーダンスが増加することになり、始動トルクが増加します。

以上から、正解は(2)です。

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