問 題
「電気設備技術基準の解釈」に基づいて、使用電圧6600V、周波数50Hzの電路に使用する高圧ケーブルの絶縁耐力試験を実施する。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 高圧ケーブルの絶縁耐力試験を行う場合の記述として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 直流10350Vの試験電圧を電路と大地との間に1分間加える。
- 直流10350Vの試験電圧を電路と大地との間に連続して10分間加える。
- 直流20700Vの試験電圧を電路と大地との間に1分間加える。
- 直流20700Vの試験電圧を電路と大地との間に連続して10分間加える。
- 高圧ケーブルの絶縁耐力試験を直流で行うことは認められていない。
(b) 高圧ケーブルの絶縁耐力試験を、図のような試験回路で行う。ただし、高圧ケーブルは3線一括で試験電圧を印加するものとし、各試験機器の損失は無視する。また、被試験体の高圧ケーブルと試験用変圧器の仕様は次のとおりとする。
【高圧ケーブルの仕様】
- ケーブルの種類:6600Vトリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVT)
- 公称断面積:100mm2
- ケーブルのこう長:220m
- 1線の対地静電容量:0.45μF/km
【試験用変圧器の仕様】
- 定格入力電圧:AC 0-120V
- 定格出力電圧:AC 0-12000V
- 入力電源周波数:50Hz
この絶縁耐力試験に必要な皮相電力の値[kV・A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 4
- 6
- 9
- 10
- 17
解 説
(a)
高圧及び特別高圧の電路での耐圧試験は、電路の種類によって、以下のような試験電圧によって行います。試験電圧を連続して10分間加えて問題がなければ、その電路を使用することができます。
また、電線にケーブルを使用する交流の電路においては、上記のような交流電圧による試験ではなく、直流電圧で試験してもよいことになっています。直流電圧での試験方法は、上表に規定する試験電圧の2倍の直流電圧を連続して10分間加えるというものです。
今回の場合、選択肢を見ると直流電圧での試験が想定されているので、まずは上表から試験電圧を求めて、その2倍の電圧を10分間加えるという選択肢が正解となります。
ここで、上表の試験電圧では最大使用電圧という言葉が出てきますが、これは使用電圧が1000[V]以下だと使用電圧の1.15倍となります。使用電圧が1000[V]超では使用電圧に1.15を掛けて1.1を割った値となります。
- (使用電圧)≦1000[V]:(最大使用電圧)=(使用電圧)×1.15
- (使用電圧)>1000[V]:(最大使用電圧)=(使用電圧)×1.15÷1.1
今回の場合は問題文より通常の使用電圧が6600[V]なので、最大使用電圧は下式の通り6900[V]となります。
最大使用電圧:
よって、最大使用電圧は7000[V]以下なので、今回は上表の一番上のパターンとなり、交流での試験電圧は次のように計算できます。
交流での試験電圧:
そして、今回は直流電圧で試験を行うため、この2倍の電圧を10分間加えます。
直流での試験電圧:
以上から、正解は(4)となります。
(b)
問われているのは、絶縁耐力試験をする際に必要な皮相電力S[kV・A]の値です。
- S:皮相電力 [V・A]
- V:電圧 [V]
- I:電流 [A]
問題の図に描かれている変圧器の左右どちら側で考えても皮相電力は変わりませんが(右側は電圧が高い分電流が低く、左側はその逆になるため)、高圧ケーブルの仕様を使って計算したので、以下では変圧器の右側における電圧V[V]、電流I[A]について考えていきます。
まず電圧V[V]について、設問(b)では試験用変圧器の電圧がACとなっているので、設問(a)と違って今度は交流電圧での絶縁耐力試験を行います。よって、(a)の解説で示した(2)式より、試験電圧Vは10350[V]となります。
次に電流I[A]を求めます。3線一括のケーブルは3つのコンデンサが並列に並んでいるものと見なせるため、変圧器の右側(問題図の右半分)は以下のような等価回路として描くことができます。
この等価回路より、電流I[A]は次のように表すことができます。
よって、(6)式に問題で与えられた数値と(5)式の結果を代入すれば、電流I[A]を求めることができます。
最後に、(5)式と(7)式を(4)式に代入すれば、皮相電力S[kV・A]が算出できます。
以上から、正解は(4)となります。
コメント