電験三種 R3年 電力 問17 問題と解説

 問 題     

図のように、高圧配電線路と低圧単相2線式配電線路が平行に施設された設備において、1次側が高圧配電線路に接続された変圧器の2次側を低圧単相2線式配電線路のS点に接続して、A点及びB点の負荷に電力を供給している。

S点における線間電圧を107V、電線1線当たりの抵抗及びリアクタンスをそれぞれ0.3Ω/km及び0.4Ω/kmとしたとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

なお、計算においては各点における電圧の位相差が十分に小さいものとして適切な近似を用いること。

(a) B点におけるS点に対する電圧降下率の値[%]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、電圧降下率はB点受電端電圧基準によるものとする。

  1. 1.57
  2. 3.18
  3. 3.30
  4. 7.75
  5. 16.30

(b) C点に電流20A、力率0.8(遅れ)の負荷が新設されるとき、変圧器を移動して単相2線式配電線路への接続点をS点からS’点に変更することにより、B点及びC点における線間電圧の値が等しくなるようにしたい。

このときのS点からS’点への移動距離の値[km]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 0.213
  2. 0.296
  3. 0.325
  4. 0.334
  5. 0.528

 

 

 

 

 

正解 (a)-(2), (b)-(3)

 解 説    

(a)

設問(a)の時点では変圧器は関係ないので、今回必要な部分だけを抜き出すと、問題文と図は以下のようにまとめることができます。

上図の赤字で示した電流について、A点とB点から下方向に流れる電流は条件として与えられています。よって、AB間を流れる電流はそのまま5[A]となり、SA間を流れる電流は5+15=20[A]となります。

緑色で示した抵抗RとリアクタンスXについて、問題文に1kmあたりの抵抗やリアクタンスが与えられていて、問題の図で線路長が与えられているので、その積が抵抗RとリアクタンスXの値となります。

ここで、単相2線式線路の電圧降下は次の式で表すことができます。これは公式として覚えておきたい知識ですが、導出過程が気になる方は三相3線式送電線の電圧降下のページを参照してください。(※ ただし、今回は単相2線式なので、リンク先の説明文とは異なる部分もあります。)

  • Vd:電圧降下 [V]
  • Vs:送電端電圧 [V]
  • Vr:受電端電圧 [V]
  • I:線電流 [A]
  • R:抵抗(電線1条あたり) [Ω]
  • X:リアクタンス(電線1条あたり) [Ω]
  • cosθ:負荷の力率

問題文に「適切な近似を用いること」とあるので、上式の左辺と右辺を使います(真ん中は使いません)。(1)式に上図で示した数値を代入していけばよいのですが、今回は力率が1.0なので、cosθ=1、sinθ=0となります。よって、Xsinθの項は必ず0になります。

これらを踏まえた計算結果は以下の通りです。

  • SA間:
  • AB間:

以上から、SB間の電圧降下は(2)式と(3)式の合計です。また、S点における電圧は107[V]なので、B点での受電端電圧Vr(B)は次のようになります。

これらから、B点におけるS点に対する電圧降下率εの値[%]は次のように計算することができます。

よって、正解は(2)です。

(b)

変圧器を移動したあとの条件で問題の図を描き換えると、次のように表すことができます。下図において、求めたいのはS’S間の距離LS’Sです。

問題文より、B点での電圧とC点での電圧が等しいです。これは、移動後の変圧器の位置S’点を起点として、CS’間の電圧降下とS’B間の電圧降下の値が等しいということを意味しています。

よって、それぞれの電圧降下の式を等式で結び、それをS’S間の距離LS’Sについて解けば答えが得られます。電圧降下の計算方法は設問(a)と同様なので、必要に応じて(a)の解説も参考にしながら、以下の計算式を読み解いてください。

まず、CS’間の電圧降下Vd(CS’)について考えます。電圧降下の式である(1)式に上図の条件を代入すると、Vd(CS’)は次のように表すことができます。

計算は複雑ですが、やっていることは設問(a)と同様なので、計算ミスに気をつけて慎重に進めてください。

上式より、CS’間の電圧降下Vd(CS’)を、LS’Sを使った式で表すことができました。続いて、S’B間の電圧降下Vd(S’B)についても同じように計算します。

よって、(5)式と(6)式の値は等しいので、それぞれの右辺を等式で結び、LS’Sについて解きます。

以上より、正解は(3)です。

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