問 題
単相3線式配電方式は、1線の中性線と、中性線から見て互いに逆位相の電圧である2線の電圧線との3線で供給する方式であり、主に低圧配電線路に用いられる。
100/200V単相3線式配電方式に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 電線1線当たりの抵抗が等しい場合、中性線と各電圧線の間に負荷を分散させることにより、単相2線式と比べて配電線の電圧降下を小さくすることができる。
- 中性線と各電圧線の間に接続する各負荷の容量が不平衡な状態で中性線が切断されると、容量が大きい側の負荷にかかる電圧は低下し、反対に容量が小さい側の負荷にかかる電圧は高くなる。
- 中性線と各電圧線の間に接続する各負荷の容量が不平衡であると、平衡している場合に比べて電力損失が増加する。
- 単相100V及び単相200Vの2種類の負荷に同時に供給することができる。
- 許容電流の大きさが等しい電線を使用した場合、電線1線当たりの供給可能な電力は、単相2線式よりも小さい。
解 説
単相3線式は単相2線式のちょうど真ん中にもう1線追加したかたちで、これにより負荷電力に対する線路損失が少なくなっています。その回路図は下図のように描くことができます。
(1)について、上図の回路のうち上半分に注目すると、1つの負荷に対する電圧降下の大きさv単相3は、
となります。中性線には電流が流れないので、線路抵抗は片道分だけを考えればよいです。
一方、単相2線式の回路図は下図の通りで、この場合は線路が往復分となるため、線路抵抗が単相3線式のときの2倍になります。よって、電圧降下の大きさv単相2も2倍となります。
以上から、単相3線式は単相2線式と比べて配電線の電圧降下を小さくすることができるので、(1)は正しいです。
(2)で、負荷の容量をS[V・A]とすると、中性線が切断される前は負荷の大小に関わらず約100[V]の電圧が掛かっているので(厳密には100[V]に電圧降下分を引いた値です)、負荷のインピーダンスZ[Ω]は次のように表すことができます。
上式において電圧Vは定数(100[V])であり、負荷の容量SとインピーダンスZは反比例するので、次のことがわかります。
- 容量Sが大きい → インピーダンスZは小さい
- 容量Sが小さい → インピーダンスZは大きい
ここで、中性線が切断されると、2つの負荷は直列に並ぶことになります。つまり、両者の電圧が一定ではなくなる代わりに、各負荷を流れる電流が等しくなります。
問われているのは、中性線の切断によって負荷に掛かる電圧が高くなるか低くなるかですが、電圧Vの式は
であり、中性線切断後は電流Iは2つの負荷とも同じ値なので、上記で考えた条件と合わせると、次のことが成り立ちます。
- 容量Sが大きい → インピーダンスZは小さい → 中性線切断後の電圧Vは低くなる
- 容量Sが小さい → インピーダンスZは大きい → 中性線切断後の電圧Vは高くなる
以上から、(2)の記述は正しいと判断できます。
(3)で、単相3線式では各負荷の容量が平衡である場合、中性線に電流が流れません。しかし、不平衡のときは中性線にも電流が流れるため、中性線にも線路抵抗が生じて電力損失が増加します。
よって、(3)は正しいです。
(4)で、解説の冒頭で示した回路図からもわかるように、単相3線式では、上側の電圧線と中性線の間が100[V]、下側の電圧線と中性線の間も100[V]となっています。そのため、上側の電圧線と下側の電圧線をつなぐように負荷を接続すれば、200[V]とすることができます。
よって、(4)は正しいです。
(5)で、単相3線式の場合、電線3線で2つの負荷をつなぐことができるので、1線あたりの電力は次のように計算できます。下式において、P[W]は負荷1つ分の電力です。
一方、単相2線式の場合、電線2線で1つの負荷をつないでいるので、1線あたりの電力は次のように計算できます。
よって、電線1線あたりの供給可能な電力は、単相3線式のほうが単相2線式よりも大きいので、(5)の記述が誤りです。
以上から、正解は(5)となります。
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