電験三種 R3年 電力 問1 問題と解説

 問 題     

次の文章は、水力発電所の種類に関する記述である。

水力発電所は( ア )を得る方法により分類すると、水路式、ダム式、ダム水路式があり、( イ )の利用方法により分類すると、流込み式、調整池式、貯水池式、揚水式がある。

一般的に、水路式はダム式、ダム水路式に比べ( ウ )。貯水ができないので発生電力の調整には適さない。ダム式発電では、ダムに水を蓄えることで( イ )の調整ができるので、電力需要が大きいときにあわせて運転することができる。

河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を( エ )発電という。貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。

1日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持ち、電力需要が小さいときにその池に蓄え、電力需要が大きいときに放流して発電する方式を( オ )発電という。自然の湖や人工の湖などを用いてもっと長期間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式を貯水池式発電という。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  • ア  イ    ウ       エ    オ
  1. 落差 流速 建設期間が長い  調整池式 ダム式
  2. 流速 落差 建設期間が短い  調整池式 ダム式
  3. 落差 流量 高落差を得にくい 流込み式 揚水式
  4. 流量 落差 建設費が高い   流込み式 調整池式
  5. 落差 流量 建設費が安い   流込み式 調整池式

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

水力発電は、高い位置にある水を低い位置にある水車のところまで落とし、その水車の回転によって発電機が発電します。つまり、もともとの位置エネルギーは運動エネルギー(または圧力エネルギー)を経て電気エネルギーに変わります。

よって、位置エネルギーがないと始まらないのですが、この位置エネルギーはmghで表されるので、質量m(水力発電においては流量)と高さh(水力発電においては落差)の2つの変数が重要な要素となります。

このうち、落差を得る方法によって分類したものが、水路式、ダム式、ダム水路式なので、( ア )には「落差」が入ります。

水路式はダムがなく、河川から直接水を引くタイプです。この場合、河川の上流から下流へと流れる道が、そのまま水路となります。また、ダム式はダムを作って水をせき止めるタイプです。ダム水路式は、ダムによる圧力と、河川の上流下流の落差の両方を利用したタイプです。

一方、流量の利用方法により分類すると、流込み式、調整池式、貯水池式、揚水式に分けられます。よって、( イ )には「流量」が入ります。

流込み式は、河川の自然の流れをそのまま利用するため、貯水しない(=流量を調整しない)方式です。

調整池式と貯水池式はどちらも流量調整を行いますが、調整池式は比較的少量の水を溜めて1日または数日単位の調整運用をするのに対し、貯水池式は大量の水を溜めて季節的に変動する河川流量の調整を行います。

また、揚水式では上下2つの池があり、昼間太陽光発電などで電力が余ったときに、下の池から上の池に揚水しておき、夜間など電力不足のときに上の池の水を落として発電するという方式です。

この時点で( ア )は「落差」、( イ )は「流量」なので、選択肢は(3)と(5)に絞られます。

( ウ )について、水路式はダムを作らないので、メリットとしては建設期間が短く、建設費が安いことが挙げられます。また、デメリットとしては高落差を得にくいことです。よって、選択肢(3)の「高落差を得にくい」と(5)の「建設費が安い」はどちらも正しいといえます。

( エ )については上記で解説済みですが、川の自然の流れをそのまま利用するのは「流込み式」です。よって、( エ )には「流込み式」が入ります。

( オ )もすでに解説済みですが、( オ )を含む文章に「1日又は数日程度の河川流量を調整」とあるので、これは「調整池式」のことであると判断できます。

以上から、正解は(5)となります。

コメント