電験三種 R2年 理論 問15 問題と解説

 問 題     

図のように、線間電圧(実効値)200Vの対称三相交流電源に、1台の単相電力計W1、X=4Ωの誘導性リアクタンス3個、R=9Ωの抵抗3個を接続した回路がある。単相電力計W1の電流コイルはa相に接続し、電圧コイルはb-c相間に接続され、指示は正の値を示していた。

この回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし、対称三相交流電源の相順は、a、b、cとし、単相電力計W1の損失は無視できるものとする。

(a) R=9Ωの抵抗に流れる電流Iabの実効値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 6.77
  2. 13.3
  3. 17.3
  4. 23.1
  5. 40.0

(b) 単相電力計W1の指示値[kW]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 0
  2. 2.77
  3. 3.70
  4. 4.80
  5. 6.40

 

 

 

 

 

正解 (a)-(2), (b)-(3)

 解 説    

(a)

問題の回路は三相回路になっていて、このままでは考えにくいので、まずは三相回路から1相分の等価回路を抜き出して考えます。この際、Δ結線では中性点がなく等価回路が描けないので、Δ結線をY結線に直した上で下図のように等価回路を描きます。

上図に示した通り、Δ-Y変換では1相あたりの抵抗の値は1/3倍となり、電流は√3倍になります。リアクタンスはΔ-Y変換に関わらないのでそのままです。また、Y結線の相電圧は線間電圧(=Δ結線の相電圧)の1/√3倍になります。

この等価回路の合成インピーダンスをZとすると、オームの法則を使うことで次のように電流Iabを計算することができます。

よって、正解は(2)です。

(b)

この単相電力計W1は、電流コイルがa相に、電圧コイルはb-c相間に接続されているため、その指示値(電力)は次の式で表すことができます。

  • P:電力 [W]
  • V:b-c相間の電圧 [V]
  • I:a相を流れる電流 [A]
  • θ:IとVのなす角(位相差)

ここで、電流Iについては(a)ですでに求めています。(a)では1相あたりの等価回路を考えたので、そこを流れる電流IYが1相あたりの電流です。電流の大きさはa相でもb相でもc相でも一緒なので(位相は違いますが)、a相を流れる電流I[A]は次のようになります。

また、電圧Vも簡単にわかります。問題文には線間電圧が200[V]とあり、問題の回路図でもそのように描かれているため、b-c相間の電圧の大きさは200[V]です。

以上でIとVがわかったので、残る「IとVのなす角(位相差)」を求めるのがこの問題の肝です。

いきなりI(a相を流れる電流)とVのなす角(b-c相間の電圧)を考えるのは難しいので、最初はa相だけで考えて、a相の電流と電圧の位相差を求めることにします。

下図は(a)で使った1相あたりの等価回路です。これはコイルを含む回路なので、電流は電圧に対して遅れます(ちなみに、回路にコンデンサがあれば、電流は電圧に対して進みます)。どのくらい遅れるのかは抵抗とコイルの兼ね合いですが、これは直角三角形を描くとわかります。

上図の通り、a相の電流Iは、a相の相電圧Eaよりもαだけ遅れることになります。

続いて、今度はa相の相電圧Eaとb-c相間の電圧Vの位相差について考えます。まずは下図を確認してください。

上図を描く順番としては、まずはEaを基準として、時計回りで等間隔(120°ずつ)にEb、Ecを描きます。EbとEcはそれぞれb相とc相の相電圧です。この順番は、問題文に「対称三相交流電源の相順は、a、b、c」とあるためです。

また、知りたいのはb-c相間の電圧Vの位相ですが、b-c相間の表現は文字通り「bからcを引く」で表すことができます。よって、Ecの反対である-Ecを描き、それとEbとの合力がVになります。

ここまで描くと上図からわかるように、VはEaに対してπ/2だけ遅れることになります。

以上の角αと角βを合わせることで、求めたいcosθを計算することができます。途中の計算では、三角関数の公式「cos(θ1-θ2)=cosθ1cosθ2+sinθ1sinθ2」を使っています。

ここまで長かったですが、(2)式、(3)式、(4)式を(1)式に代入することで、問われている電力Pを求めることができます。

よって、正解は(3)となります。

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