電験三種 R2年 機械 問8 問題と解説

 問 題     

変圧器の構造に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 変圧器の巻線には軟銅線が用いられる。巻線の方法としては、鉄心に絶縁を施し、その上に巻線を直接巻きつける方法、円筒巻線や板状巻線としてこれを鉄心にはめ込む方法などがある。
  2. 変圧器の鉄心には、飽和磁束密度と比透磁率が大きい電磁鋼板が用いられる。この鋼板は、渦電流損を低減するためケイ素が数%含有され、さらにヒステリシス損を低減するために表面が絶縁皮膜で覆われている。
  3. 変圧器の冷却方式には用いる冷媒によって、絶縁油を使用する油入式と空気を使用する乾式、さらにガス冷却式などがある。
  4. 変圧器油は、変圧器本体を浸し、巻線の絶縁耐力を高めるとともに、冷却によって本体の温度上昇を防ぐために用いられる。また、化学的に安定で、引火点が高く、流動性に富み比熱が大きくて冷却効果が大きいなどの性質を備えることが必要となる。
  5. 大型の油入変圧器では、負荷変動に伴い油の温度が変動し、油が膨張・収縮を繰り返すため、外気が変圧器内部に出入りを繰り返す。これを変圧器の呼吸作用といい、油の劣化の原因となる。この劣化を防止するため、本体の外にコンサベータやブリーザを設ける。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

先に答えを示しておくと、(2)の文章の「渦電流損」と「ヒステリシス損」の位置が反対になっています。正しくは、ケイ素を数%含有することでヒステリシス損が低減でき、また、表面の絶縁皮膜によって渦電流損が低減できます。

鉄心に交流磁束が通ると損失(鉄損)が発生します。この鉄損の成分は渦電流損とヒステリシス損の2つに分類されます。

渦電流損は、交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生します。そこで、電気抵抗が高い強磁性材料や、表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて、電流の経路を断つことで損失を低減させます。

よって、選択肢(2)の「表面が絶縁皮膜で覆われている」という文章は渦電流損のことを指していると判断できます。

一方、ヒステリシス損は、鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生します。ヒステリシス損を小さくするためには、透磁率や抵抗率、飽和磁束密度の大きい鉄心を選ぶのが有効です。また、保磁力と残留磁気は小さいほうが良いです。

この特徴を踏まえた結果として、けい素鋼板などの電磁鋼板が広く用いられています。鉄は、けい素含有量の増加に伴って飽和磁束密度と保磁力が減少し、透磁率と電気抵抗が増加する傾向があるので、トータルで考えるとヒステリシス損が低減できるため、けい素鋼板は優れた鉄心となります。

よって、選択肢(2)の「ケイ素が数%含有され」という文章はヒステリシス損のことを指していると判断できます。

以上より、正解は(2)です。

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