電験三種 R2年 電力 問2 問題と解説

 問 題     

次の文章は、汽力発電所の復水器の機能に関する記述である。

汽力発電所の復水器は蒸気タービン内で仕事を取り出した後の( ア )蒸気を冷却して凝縮させる装置である。復水器内部の真空度を( イ )保持してタービンの( ア )圧力を( ウ )させることにより、( エ )の向上を図ることができる。

なお、復水器によるエネルギー損失は熱サイクルの中で最も( オ )。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •   ア   イ   ウ     エ    オ
  1. 抽気  低く  上昇  熱効率  大きい
  2. 排気  高く  上昇  利用率  小さい
  3. 排気  高く  低下  熱効率  大きい
  4. 抽気  高く  低下  熱効率  小さい
  5. 排気  低く  停止  利用率  大きい

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

( ア )に入るのは「排気」か「抽気」です。

「排気」のほうはわかりやすいと思いますが、そこでの役割を終えて、排出する分の蒸気です。排ガスや排泄物といった言葉にも使われる通り、終わった後に出てくるものというイメージを持ってください。

一方、タービンの途中から蒸気を抜き出すことを「抽気」といいます。これも汽力発電ではよく用いられる言葉です。この抽気が持っている熱で給水(これからボイラに入る水のこと)を温めることで、発電機全体の熱効率を向上することができます。

以上より、今回は「蒸気タービン内で仕事を取り出した後」の話なので、( ア )には「排気」を入れるのが適切です。問題文に書かれている通り、タービンで仕事を終えた蒸気は復水器で冷やされて水に変わります。

( イ )のきちんとした解説は後ほどしますが、とりあえず「真空度が(高い/低い)」とくれば、ほとんどの確率で「高い」を選ぶべきです。というのも、真空度が低いなら普通はわざわざ「真空」という言葉を用いないからです。

圧力が大気圧と同じくらいなら「大気圧」と呼び、もしそれより空気が薄いなら、「圧力を下げる・低下させる」などと表現するので、ほぼ真空でない限り「真空」という言葉は出てきません。そして、ほぼ真空なら真空度は高いといえます。

よって、( イ )には「高い」が入りますが、以下ではきちんと文脈から考えていきます。( イ )と( ウ )は文章がつながっているため、これらを合わせて解説します。

復水器は、本文中にもある通り、タービンで仕事を終えた蒸気を冷却して凝縮させる(水に変える)装置です。このとき、復水器の真空度に応じてタービンの排気圧力が変わるという話ですが、目的は蒸気を凝縮させることなので、より凝縮しやすくなるような条件にすることが望ましいです。

ここで、水の沸点について考えます。空気の薄い山頂では水の沸点が下がるというのは有名な話で、たとえば富士山の山頂では水は87℃で沸騰します(これは余談です)。大事なことは、空気が薄いほど沸点が低くなるということです。

水が蒸気に変わる沸点と蒸気が水に変わる凝固点は全く同じものなので、空気が薄いほど沸点が低くなるという話から考えると、蒸気の圧力が低いほど凝固点が低くなって水に変えやすくなることがわかります。よって、( ウ )には「低下」が入ります。

また、蒸気の圧力を低下させるためには、復水器内部の圧力をあらかじめ下げておけばよいので、真空度を高くします。もし復水器内部の圧力が高いと、蒸気の圧力を吸収するものがなく、蒸気の圧力が下がりません。よって、( イ )には「高く」が入ります。

( エ )に関して、上記のように蒸気を効率よく水に変えることができれば、発電機全体の「熱効率」が上がります。よって、( エ )には「熱効率」が入ります。

「熱効率」は、投入した熱量に対して、どれだけの割合を仕事量に変えられたかを示す値です。一方、「利用率」は、発電した電力に対してどれだけ消費したかを示す割合です。

( オ )に関して、汽力発電の場合、復水器やボイラ、タービン、発電機など様々な過程でエネルギーの損失が起こります。このうち、復水器での損失が極端に大きく、投入した熱量のおよそ半分程度を復水器で一気に失うことになります。

その後、ボイラやタービン、発電機で少しずつ熱損失が出て、最終的には投入した熱量の40%くらいが電力に変換されます。よって、( オ )には「大きい」が入ります。

以上から、正解は(3)です。

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