問 題
ダム水路式発電所における水撃作用とサージタンクに関する記述として、誤っているものを次の(1)～(5)のうちから一つ選べ。
- 発電機の負荷を急激に遮断又は急激に増やした場合は、それに応動して水車の使用水量が急激に変化し、流速が減少又は増加するため、水圧管内の圧力の急上昇又は急降下が起こる。このような圧力の変動を水撃作用という。
- 水撃作用は、水圧管の長さが長いほど、水車案内羽根あるいは入口弁の閉鎖時間が短いほど、いずれも大きくなる。
- 水撃作用の発生による影響を緩和する目的で設置される水圧調整用水槽をサージタンクという。サージタンクにはその構造・動作によって、差動式、小孔式、水室式などがあり、いずれも密閉構造である。
- 圧力水路と水圧管との接続箇所に、サージタンクを設けることにより、水槽内部の水位の昇降によって、水撃作用を軽減することができる。
- 差動式サージタンクは、負荷遮断時の圧力増加エネルギーをライザ(上昇管)内の水面上昇によってすばやく吸収し、そのあとで小穴を通してタンク内の水位をゆっくり通常のタンク内水位に戻す作用がある。
解 説
(1)は水撃作用という用語の説明文になっていて、内容的にも矛盾点がないので、(1)は正しいです。
(2)に関して、水撃作用は水圧の急上昇・急降下によって生じるものです。水圧管が長ければその分だけ水圧は大きくなり、また、弁の閉鎖時間が短ければそれだけ急な圧力変化を起こすので、どちらの場合も水撃作用が大きくなります。よって、(2)も正しいです。
(3)で、1文目にはサージタンクの説明が書かれていて、これは正しい内容です。しかし、サージタンクは圧力を逃して水撃作用が起こらないようにするためにあるのに、もしこれが「密閉構造」だと、下図のようにサージタンク内の水や空気の圧力がどんどん上がっていき、いずれ破綻してしまいます。
実際にはサージタンクは「密閉構造」ではなく「開放構造」となっています。下図のように、過剰な水圧に応じて水面が上下することで系外(大気中)に圧力を逃し、水圧管が痛むのを防ぐ役割を果たします。
ちなみに、サージタンクの分類として差動式、小孔式、水室式などがあるというのは正しいです。とはいえ、これらの分類はマイナーな知識なので、あまり気にしなくても良いかもしれません。
よって、(3)の「密閉構造」が誤りなので、正解は(3)となります。
(4)は(3)の解説文や図で示した通りです。サージタンクの水槽の水位が昇降することによって、水撃作用が軽減されます。つまり、(4)は正しいです。
(5)も正しい文章ですが、これはサージタンクの一般的な話ではなく、差動式の特徴が書かれています。ややマイナーな話になってくるので、本番でこのような選択肢が出てきてもスルーして構わないと思います。
以上から、正解は(3)です。
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